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一橋大・明大・千葉工大…大手学術出版社が転換契約を単科大・私大に拡大、OA論文2倍に

一橋大・明大・千葉工大…大手学術出版社が転換契約を単科大・私大に拡大、OA論文2倍に

※イメージ

大手学術出版社のシュプリンガーネイチャーは、同社の学術論文雑誌(ジャーナル)の利用が少ない日本の大学向けに、新たな転換契約を始めた。一橋大学、明治大学、千葉工業大学、埼玉医科大学といった単科大学や私立大学など13校が参加した。以前からある研究大学向け契約の参加大学数も21校に倍増した。2種類の契約を合わせた日本での同社のオープンアクセス(OA)論文は、2024年に約1900報と前年比倍増になる見込みだ。

各大学が出版社と結ぶ転換契約は、従来のジャーナル購読料に対し、購読者以外も論文閲覧ができるOA出版料を組み合わせた料金体系に転換するもの。契約した大学の所属研究者は、同社の2000誌以上のジャーナルで発表した論文を各大学の資金支援によってOA化できる。政府は未購読の大学の研究者や一般人が研究成果にアクセスできるようOA化を推進している。

シュプリンガーネイチャーは23年1月に日本で転換契約を開始。論文発表が多く、同社の多数の雑誌をパッケージで購読する研究大学コンソーシアム(RUC)の加盟大学を対象にした。参加大学数は24年1月に10校から21校に増えた。

1月から始めた転換契約「J―SPRINTA」(ジェイ・スプリンタ)はRUC加盟以外で、ジャーナルを個別に購読する単科大学などでも、論文発表が年5報以上なら可能だ。

両契約を合わせ24年は1900報以上のOA出版が予想される。この結果、大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)加盟の大学の研究者が責任著者となり、同社から出版される論文のうち、約3割がOA化されることになる。

日刊工業新聞 2024年01月18日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
転換契約は大規模研究大学からスタートしたが、そうでない大学こそ新たな形を待っていたのではないか。購読している論文雑誌が限られ、発表する論文の数や雑誌も少ない大学とそこに所属する研究者にとって、ジャーナルを通して社会とつながる機会は貴重だからだ。新スタイルの契約が、社会科学でトップの一橋大をはじめ、中堅地方国立大学、単科の私立大学、全学規模は大きいが文系中心となりがちの総合私立大学と、幅広い顔ぶれになったことが、これを裏付けるだろう。また同社は当初、対象として「論文発表が年10報以上」というラインを検討していたが、結果として「5報以上」とハードルを下げている。オープンサイエンスの世界的な波の中で、各大学の選択肢が広がることを歓迎したい。

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