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曙ブレーキがEV高性能ブレーキで中国深耕、日系車メーカー苦戦で現地顧客開拓

曙ブレーキがEV高性能ブレーキで中国深耕、日系車メーカー苦戦で現地顧客開拓

吉利汽車に採用された高性能ブレーキ

曙ブレーキ工業は2024年度に中国事業で、現地メーカー向けの売上高比率を23年度見込み比2倍以上となる4割程度に引き上げる。電気自動車(EV)用高性能ブレーキなどの開発体制を強化し、新規顧客を開拓する。また既存顧客には別車種での部品採用などを提案する。中国でEVなど新エネルギー車(NEV)の需要が急拡大する中、日系車メーカーは苦戦を強いられており、日系サプライヤーの間で現地顧客を開拓する動きが広がりつつある。

中国の現地メーカーは新車の開発期間が日系メーカーに比べて半分程度と短い。こうした開発スピードに対応するため、曙ブレーキは現地の開発人員を増員しており、すでに21年6月時点に比べて現地開発人員を2倍の規模に増強した。今後も受注案件に応じて人員を補強する。開発資源を優先的に振り向けるほか、シミュレーション技術の活用による開発工数の削減も推進する。

現在、中国現地メーカーでは吉利汽車や新興EV勢の小鵬汽車、理想汽車などと取引がある。電動車は電池の搭載などによる重量増に加え、モーター駆動でトルクも大きくなるため、制動力の高い高性能ブレーキへの引き合いが強まっている。曙ブレーキの宮地康弘社長は「当社は高性能ブレーキに強みがある」としており、取引企業や採用車種の拡大に意欲を示す。

中国汽車工業協会(CAAM)や調査会社のマークラインズによると、中国の23年の自動車販売は前年比12・0%増の3009万4000台。このうちNEVは同37・9%増の949万5000台で、市場占有率は31・6%に上った。一方、トヨタ自動車日産自動車ホンダの中国販売はいずれも前年を下回った。

宮地社長は中国事業の足元の状況について「増収ではあるが、期初計画値に対し3割くらい売り上げが未達」とした上で「年3000万台の最大市場を指をくわえて見るのは(経営的に)違う」と説明。EV用高性能ブレーキなどを訴求し、中国メーカーとの取引拡大を狙う。

日系の自動車部品メーカーでは、小糸製作所が27年度をめどに中国事業の売上高のうち現地メーカー向け販売比率を30%程度(23年度見込みは10―15%)に引き上げる方針。トピー工業は数年前に取引をやめた中国EV大手・比亜迪(BYD)へのホイール供給を再開した。また自動車内装品を手がける共和レザーは、BYDとの取引拡大を目的とした専門部署を設置するなど、カントリーリスクを注視しつつ現地メーカーを攻略する動きが拡大している。

日刊工業新聞 2024年01月17日

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