大学発スタートアップ1.5倍に、慶大が研究の社会実装推進で一手
慶応義塾大学は自然科学系の大型研究拠点で得た知見を人文・社会科学系に拡大し、モノ・コトづくりの社会実装を実践し続けるシステム開発に着手した。スタートアップ(SU)の創出や産学連携を手がける施設を稼働し、国際情勢分析やサステナビリティーの活動をする実学のセンターを整備する。同大発SUを5年後に1・5倍の350社にする方針だ。
文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J―PEAKS)に採択された戦略。慶大は文科省の「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)で、腸内の微生物集合体と病気に関わる多臓器のデータ収集と、人工知能(AI)や量子コンピューターでの解析を手がける。「共創の場形成支援プログラム」(COI―NEXT)では都市型ヘルスケアのデータ活用とサービス、地域の資源循環社会の確立の2事業に取り組む。三つの大型拠点事業が採択されているのは私立大学で唯一だ。
ただJ―PEAKSの構想は自然科学系の特定分野に絞らないのが特徴。「未来のコモンセンス(常識)」づくりに向け、全学の研究者の意識醸成を重視。既存の拠点群を伸ばす一方、人文・社会科学系の拠点創出や拠点間融合の土壌を豊かにすることに注力する。 具体的にはグローバル課題を手がける同大グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)が生成AIを使い、各分野の知の見える化と融合を推進。法学部などの研究者によるシンクタンク機能も組織化する。
自然科学系では、信濃町キャンパス(東京都新宿区)に、医療データ活用や医工連携をするSUインキュベーション施設を整備。延べ床面積は約2300平方メートル。理工学部がある矢上キャンパス(横浜市港北区)には同1800平方メートルの産学共同研究の建物を置く。
同大発SUは現在、236社だがこれを同事業終了の5年後に350社にする。10年後までに同事業によるSU3社の上場を目標としている。