日揮・千代田化工…エンジ活況期へLNG上昇気流、新規案件が本格化する
エンジニアリング専業3社が活況期に入る。主力の石油・ガス分野は液化天然ガス(LNG)プラントなど大型案件の設計・調達・建設(EPC)を遂行中で、新規受注も期待できる。一方で、脱炭素の潮流を見据えたエネルギーなどの新規分野では、各社が準備する案件が事業化に近づいている。足元と将来の両方の時間軸で成果が見込める。(戸村智幸)
ウクライナ危機によりロシア産天然ガスの購入を停止したことで、欧州中心にLNGの需要が高まっている。天然ガス火力発電は石炭火力発電より二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に低減できるため、トランジション(移行)エネルギーとしても期待されている。
天然ガスをマイナス162度Cで液化するプラントのEPCを安定的に遂行できるのは世界で4社とされ、うち2社が日揮ホールディングス(HD)と千代田化工建設だ。千代田化工が1兆数千億円で受注したカタールのLNGプラントをはじめ、両社は複数の大型案件のEPCを遂行している。
日揮HDが2023年度末までにアラブ首長国連邦(UAE)、パプアニューギニアなど複数のLNGプラント受注を目指すなど新規案件も豊富にある。
ただ、LNGプラントは完成に5―6年かかり、大型案件ゆえのプロジェクト管理の難しさなどリスクがある。足元では資機材や人件費が高止まりしている。これらを踏まえ、発注者にコスト増加分を負担してもらうなど、契約条件を見直す動きが進む。
EPCにデジタル変革(DX)を本格導入し、効率化する取り組みも広がる。設計、調達、建設それぞれをデジタルでつなぎ、建設現場の資材調達の待ち時間を短縮するなどの効果を狙う。
石油・ガス分野は当面好調が続くが、長期的には脱炭素のため需要減少が見込まれる。各社はそれを見越して、千代田化工が水素、日揮HDが持続可能な航空燃料(SAF)など新規分野の事業化を進める。日揮HDはコスモ石油などと廃食用油を回収してSAFを製造する計画で、24年度に堺市西区のプラントを稼働し、年3万キロリットルを製造する。
このように自ら事業者になるケースでは、関係する他社と連携し、サプライチェーン(供給網)構築の中心的役割が求められる。一方、新エネルギーなどのEPCの受注を目指すケースもある。両面で新規分野を進展できるかが問われる。