JR東海が発売へ、新幹線で「CO2ゼロ乗車券」の狙い
JR東海は東海道新幹線の移動で生じる二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロとする乗車券を、2024年度以降に発売する。座席をネット予約できる「EXサービス」を通じて提供する。新幹線の移動で生じるCO2は企業の生産活動以外で排出する「スコープ3」に分類され、環境意識の高い企業や団体から需要があるとみて販売を決めた。鉄道は航空機やバスと比べ環境負荷が低い移動手段とされるが、排出量の実質ゼロにまで踏み込むことで環境意識の高いビジネス客を取り込む狙い。
丹羽俊介社長が日刊工業新聞社などのインタビューに応じ、明らかにした。価格や排出するCO2を実質ゼロにするための方法などの詳細は詰めている最中という。狙いについて丹羽社長は「新幹線の環境優位性をあらためて理解してもらう」と説明する。
JR東海の試算によると、新幹線を使うと東京―新大阪の移動で1人当たり7・8キログラムのCO2を排出する。環境面で優れる移動手段だが、航空業界では排出したCO2を相殺する運航が国内外で始まっており環境意識の高い顧客が流出する懸念がある。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、スコープ3を含めた温室効果ガス(GHG)排出量の開示を求める基準を公表している。環境に良い移動手段とされる鉄道だが、排出抑制や相殺などの工夫が鉄道業界に求められていくことになりそうだ。
JR東海では23年10月から、新幹線の移動で生じるCO2を実質ゼロとするサービスを車両の貸し切りサービスを通じて提供している。移動区間や車両数に応じ、排出したCO2を相殺してゼロとしたことを示す証明書を発行する仕組みだ。海外からの観光客が主に利用しているという。今回、EXサービスを活用することで、国内の出張客の脱炭素化のニーズに応える。