消費税増税は延期すべきか?際限ないインフレと円安に繋がる可能性の禁じ手
「時間がかかっても、地道な規制緩和による成長戦略の実行を」(安東氏)
政府は16日に世界の経済・金融情勢を内外の有識者らと意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を開く。安倍晋三首相をはじめ関係閣僚、日銀総裁が出席し、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)まで5回程度開催。サミット議長国として世界経済に適切に対応する施策を模索する。ただ最大の焦点は、安倍首相が会合後、2017年度の消費増税延期を決断するかどうかである。
個人消費はじめ景気回復力が鈍い日本が消費増税を延期すれば、内需主導の成長が促されて世界経済に貢献できるとの見方がある。ただ増税延期は、20年度までの財政健全化計画の前提条件が変わることを意味する。”景気条項“を封じてまで17年度の消費税率10%を約束した安倍政権が、自らこれを覆せば社会保障改革は足踏みし、将来世代に禍根を残すだろう。
増税延期の是非をめぐる判断基準もあいまいだ。首相はリーマン・ショックや大震災のような「重大な事態」が発生した場合は増税を延期するが、そうした事態に該当するかどうかの判定は政治責任で行うとしている。
年初来の金融市場の混乱で世界の株式時価総額は8兆ドル目減りした。これはリーマン・ショック直後に失った5兆ドルを上回る規模で、重大な事態とみなす有識者もいる。また16年1―3月期の実質国内総生産(GDP)が停滞し、夏の参院選や衆参同日選を見据えた政治的思惑が加われば、増税延期の可能性はさらに高まるとの声も市場から聞かれる。
一方、16年度後半は原油価格が上昇基調に転じ、世界経済は緩やかに回復するとみるアナリストらは増税延期に否定的だ。
安倍政権は東京五輪を開く2020年に、GDP600兆円の達成と基礎的財政収支黒字化という財政健全化計画の実現を目指している。消費増税を予定通り実施したとしても名目3%の高い成長率を継続するのが前提で、実現は至難の業である。政権が増税延期の是非を議論するなら、健全化と経済再生の両立を目指す”アベノミクス“を修正・再構築する覚悟が求められる。
政府は16日、世界の経済・金融情勢を内外の有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を開いた。講師として招いたノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏は、日本が2017年度に予定する消費税率10%への引き上げについて「今のタイミングは適切ではない」とし、消費増税を延期すべきだとの考えを安倍晋三首相に伝えた。首相は同様の会合を5月まで開き、消費増税延期の是非を判断するとみられる。
安倍首相の指示で開かれた同会合は、首相のほか関係閣僚と日銀総裁が出席。5月末に開く伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の議長国として、世界経済に適切に対応するための施策を模索するほか、17年度の消費増税延期をめぐる判断材料にするとみられる。
スティグリッツ教授は会合で「世界経済は大低迷」の状態にあり、その原因は「世界の総需要不足にある」と指摘。これを解決するには「金融政策だけでは不十分」とし、財政出動を伴う総需要拡大への「国際協力が大事だ」と、日本にも暗に財政出動を促した。
その上で、サミット議長国の日本は「総需要拡大への規範を示すことが期待される」とし、17年度の消費増税は「総需要を拡大させない。消費税率を引き上げるには、今のタイミングは適切ではない。法人減税も総需要拡大を促さない」との考えを示した。
同会合はサミットまで5回程度開催する予定。17日の第2回会合には米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と日本経済研究センター理事長で元日銀副総裁の岩田一政氏の2氏、22日の第3回会合はノーベル経済学賞受賞者で米ニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏を講師に招く予定。
初会合に招いたスティグリッツ氏を含むこれら4氏について、ニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は「4氏とも安倍政権の経済政策『アベノミクス』には好意的な人物。中でもクルーグマン教授は(日銀金融緩和を評価する)リフレ(リフレーション)派に近く、(消費税率10%への引き上げには)否定的な意見を述べる可能性がある」とみている。
安倍首相が消費増税延期を決断する可能性については「1―3月期の国内総生産(GDP)は08年のリーマン・ショック当時ほど悪くないが、停滞する世界経済に与えるインパクトを考えての増税延期はあるかもしれない」と見通す。
個人消費はじめ景気回復力が鈍い日本が消費増税を延期すれば、内需主導の成長が促されて世界経済に貢献できるとの見方がある。ただ増税延期は、20年度までの財政健全化計画の前提条件が変わることを意味する。”景気条項“を封じてまで17年度の消費税率10%を約束した安倍政権が、自らこれを覆せば社会保障改革は足踏みし、将来世代に禍根を残すだろう。
増税延期の是非をめぐる判断基準もあいまいだ。首相はリーマン・ショックや大震災のような「重大な事態」が発生した場合は増税を延期するが、そうした事態に該当するかどうかの判定は政治責任で行うとしている。
年初来の金融市場の混乱で世界の株式時価総額は8兆ドル目減りした。これはリーマン・ショック直後に失った5兆ドルを上回る規模で、重大な事態とみなす有識者もいる。また16年1―3月期の実質国内総生産(GDP)が停滞し、夏の参院選や衆参同日選を見据えた政治的思惑が加われば、増税延期の可能性はさらに高まるとの声も市場から聞かれる。
一方、16年度後半は原油価格が上昇基調に転じ、世界経済は緩やかに回復するとみるアナリストらは増税延期に否定的だ。
安倍政権は東京五輪を開く2020年に、GDP600兆円の達成と基礎的財政収支黒字化という財政健全化計画の実現を目指している。消費増税を予定通り実施したとしても名目3%の高い成長率を継続するのが前提で、実現は至難の業である。政権が増税延期の是非を議論するなら、健全化と経済再生の両立を目指す”アベノミクス“を修正・再構築する覚悟が求められる。
ノーベル経済学賞教授は「延期を」ー政府の初会合で
政府は16日、世界の経済・金融情勢を内外の有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を開いた。講師として招いたノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏は、日本が2017年度に予定する消費税率10%への引き上げについて「今のタイミングは適切ではない」とし、消費増税を延期すべきだとの考えを安倍晋三首相に伝えた。首相は同様の会合を5月まで開き、消費増税延期の是非を判断するとみられる。
安倍首相の指示で開かれた同会合は、首相のほか関係閣僚と日銀総裁が出席。5月末に開く伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の議長国として、世界経済に適切に対応するための施策を模索するほか、17年度の消費増税延期をめぐる判断材料にするとみられる。
スティグリッツ教授は会合で「世界経済は大低迷」の状態にあり、その原因は「世界の総需要不足にある」と指摘。これを解決するには「金融政策だけでは不十分」とし、財政出動を伴う総需要拡大への「国際協力が大事だ」と、日本にも暗に財政出動を促した。
その上で、サミット議長国の日本は「総需要拡大への規範を示すことが期待される」とし、17年度の消費増税は「総需要を拡大させない。消費税率を引き上げるには、今のタイミングは適切ではない。法人減税も総需要拡大を促さない」との考えを示した。
同会合はサミットまで5回程度開催する予定。17日の第2回会合には米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と日本経済研究センター理事長で元日銀副総裁の岩田一政氏の2氏、22日の第3回会合はノーベル経済学賞受賞者で米ニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏を講師に招く予定。
初会合に招いたスティグリッツ氏を含むこれら4氏について、ニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は「4氏とも安倍政権の経済政策『アベノミクス』には好意的な人物。中でもクルーグマン教授は(日銀金融緩和を評価する)リフレ(リフレーション)派に近く、(消費税率10%への引き上げには)否定的な意見を述べる可能性がある」とみている。
安倍首相が消費増税延期を決断する可能性については「1―3月期の国内総生産(GDP)は08年のリーマン・ショック当時ほど悪くないが、停滞する世界経済に与えるインパクトを考えての増税延期はあるかもしれない」と見通す。
日刊工業新聞2016年3月16日「社説」/17日