「ネイチャーポジティブ」世界目標に、企業に迫られる対応
企業活動と結びつき強く
2023年は生物多様性に注目が集まった。22年末、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再生)」が世界目標となったためだ。
政府は3月、「生物多様性国家戦略」を11年ぶりに改定。「ネイチャーポジティブ経済」を掲げ、自然再生と企業活動を連動させる方向性を明確にした。また環境省は、30年時点の自然再生による国内経済への効果を年125兆円と試算した。関連ビジネスとして農業や林業のほか、バイオ燃料や代替肉、再生可能エネルギーなどが挙げられる。同省は24年3月までに「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」をまとめる。
国際会議でも議論された。4月、札幌市で開かれた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、日本政府の呼びかけで「ネイチャーポジティブ経済アライアンス」が設立された。
情報開示への関心も高まった。国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が9月、事業活動と自然の関係を明らかにする情報開示のフレームワーク(枠組み)を公表。10月に来日したデビッド・クレイグTNFD共同議長は「以前、再生エネはビジネスチャンスと思われていなかったが、今は資金が集まる。自然関連もチャンスは多い」と説明し、日本企業に開示を呼びかけた。
また環境省は10月、企業や自治体によって生物多様性が守られている緑地122カ所を「自然共生サイト」として認定した。伊藤信太郎環境相は「企業の強い関心が示された。自然再生に向けた社会変革を感じた」と手応えを語った。政治家も関心を寄せており、自民党の環境・温暖化対策調査会は認定制度を法制化するように提言し、同省が準備を進めている。
過去にないほど、企業活動と生物多様性が結びつこうとしている。この傾向が24年も続く可能性があり、企業は対応が迫られる。