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細菌を排除する「免疫細胞」に骨折の治癒を促す機能

東大が発見。骨折の完治早める新治療法に期待
細菌を排除する「免疫細胞」に骨折の治癒を促す機能

骨折が治る過程をコンピューター断層撮影装置(CT)で評価。手術後14日以後、IL-17欠損マウスに治癒の遅れが見られる(東大提供)

 東京大学大学院医学系研究科の高柳広教授らの研究グループは、細菌などの異物から体を守る「免疫」を担当するリンパ球の一種「ガンマデルタT細胞」が、骨折の治癒を促進することを突き止めた。骨折した部位に同細胞が集まり、新しい骨の形成を促すたんぱく質を生み出すことが分かった。マウスの実験で遺伝子操作により同たんぱく質が発現しないようにすると、骨折の治りが遅れることを確認した。

 ガンマデルタT細胞は皮膚など体内と体外の境界部に多く存在する。がん治療では、患者から採取した血液中の同細胞を体外で増やし、患者の体内に戻してがん細胞を攻撃する治療法がある。同様の手法を骨折部位に応用し、骨の形成を促進できれば治療期間を短縮できる可能性がある。

 生きたマウスの太ももの骨に直径1ミリメートル程度の穴を開け、骨の欠損が治る過程を解析した。骨の欠損部ではたんぱく質の一種「インターロイキン(IL)―17」が増加。遺伝子操作によりIL―17を発現しないようにしたマウスは、正常なマウスと比べて欠損の治りが遅かった。

 細胞の実験で、IL―17は骨や血管などの基となる「間葉系幹細胞」の増殖を促すとともに、同幹細胞が新しい骨を作る「骨芽細胞」に分化する作用を促進することを発見。液体中に分散した微細粒子を光学的に解析する「フローサイトメトリー法」により、骨折部位でIL―17を生み出す細胞の大半はガンマデルタT細胞であることが分かった。

 成果は英電子版科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。
日刊工業新聞2016年3月14日 科学技術・大学面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
記事では新たな治療法の例として、患者由来のガンマデルタT細胞を体外で増殖させ、患者の体内に戻す方法を紹介しました。東大・高柳教授によると「ガンマデルタT細胞の動員や活性化を誘導する分子が明らかになれば、そうした分子を骨折部位に投与することで、同細胞を体外で増やすプロセスを省略して治療を促進できる可能性がある」とのことです。

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