博士インターン×産学共同研究…C―ENGINEが新方式検討
加機関と連携、シンポで議論
産学協働イノベーション人材育成協議会(C―ENGINE、國府寛司代表理事=京都大学理事)は、カナダの機関と連携し「インターンシップ(就業体験)×産学共同研究」という新方式の検討を始めた。C―ENGINEの10周年記念シンポジウムのパネルディスカッションではその実現に向け、リサーチ・アドミニストレーター(URA)によるマッチングや教員の参加など、新たな切り口が議論された。(編集委員・山本佳世子)
C―ENGINEは博士課程学生ら大学院生のインターンシップを10年間、実施してきた。政府補助金でスタートしたが現在は、18大学31企業の会員制で自走している。累計700件超をマッチング・実施したが、國府京大理事は「課題は博士学生の登録が一部に限られ、教員の関与も薄いことだ」と振り返る。
連携したカナダのMitacs(マイタクス)が手がけるのは、「産学共同研究の最初の取り組みとして、インターンシップで大学院生らを派遣する形だ」とブリティッシュコロンビア州政府在日事務所の徳永陵マネジング・ディレクターは説明する。潤沢な政府資金で雇用された専門人材がノルマを背負って仲介するため、仲介件数は年間約1万5000件と段違いに多い。
同じインターンシップでも教育を基本とする日本が、研究前提のカナダ方式を導入し両国の乗り入れを目指す上で、問題の一つがこの仲介人材だ。学内の研究活動を把握して共同研究を企画できる能力が必要なためだ。これに対して金沢工業大学の高橋真木子教授は「URAが担い手になる可能性はある」と前向きの発言をした。
共同研究が前提となると教員の関与もぐっと高まる。三菱電機の古藤悟技術統轄は、C―ENGINEを通じて文系博士人材の受け入れにも挑戦した。「製造業のサービス化戦略」「意思決定と管理職育成」など、理系案件と異なる幅広いテーマのため、「学生は教員と定期的に相談しながら取り組んだ」(古藤技術統轄)のが好事例といえそうだ。
成果が出た時の知的財産の扱いも、インターンシップでは企業帰属となるが、共同研究では悩ましい。シスメックスの吉田智一取締役常務執行役員最高技術責任者(CTO)は「他の海外インターンシップ受け入れでは、成果が出た時点で貢献度に応じて相談して決めている」と紹介した。一方でジョブディスクリプション(職務記述書)など契約が詳細なカナダと、緩やかな日本という違いに対する注意も挙がった。
博士インターンシップは企業メリットが少ない欠点があったが、共同研究となれば魅力は格段に高まる。両国の差異に配慮しながら、新たな段階に進むことが期待されそうだ。
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