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トヨタ・日産・ホンダ以外から初…自工会の会長にいすゞ会長が選ばれた理由

トヨタ・日産・ホンダ以外から初…自工会の会長にいすゞ会長が選ばれた理由

握手する自工会の豊田章男会長(右)と片山正則次期会長

日本自動車工業会(自工会)は22日、次期会長に片山正則副会長(69、いすゞ自動車会長)を選出したと発表した。豊田章男会長(67、トヨタ自動車会長)の3期目の任期が終わる2024年5月を待たず、同1月に会長を交代する。トヨタ、日産自動車ホンダの3社以外の企業から自工会会長に就くのは初めて。1月以降は豊田会長が退き、片山新会長を現在の副会長6人が支える新体制が始まる。脱炭素や電動化など大変革期を迎える自動車業界を勝ち抜くための国内各社の協調をけん引する。

豊田会長は「(トラックドライバーが不足する)2024年問題をはじめとして喫緊の課題となっている物流・商用領域に全員で取り組むことが未来への重要な一歩になる」と片山氏を選んだ理由を説明した。

片山氏は「カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)や物流効率化など(各社が)協調すべき課題が多い商業領域がペースメーカーになるべき」と意気込みを語った。物流の24年問題については「物流の効率化のためにデータや帳票類をデジタル化、標準化、共有化することを強力に推進したい」との考えを示した。

自工会会長を務める上では出身企業による人員や金銭面のサポートも必要になるとみられるため、会長職を務めてきた乗用車3社と比べるといすゞにはそうしたリソースやノウハウが少ないのではないかという見方もある。一方、自工会は4月から新しい運営体制を敷いて理事会の議論を活発化し、8人の正副会長がチームとなって脱炭素など業界共通の課題に取り組む運営体制を構築してきた。今回も会長企業や就任時期といった従来の慣例を踏襲せず、乗用車、商用車、2輪車の各社が参加する「フルラインアップ」で会長を支える現行体制を続けていく考えだ。

自動車業界の関係者には「豊田会長が2期連続で続投した時点で、従来の慣例は崩れたとの見方が多い」との指摘がある。自動車業界が激変期を迎える中で「(従来のように乗用3社による)持ち回り前提という時代ではない」との声も聞かれる。特に脱炭素や人流・物流に寄与する自動運転技術など「先進分野を引っ張るのは商用車だ」(業界関係者)。技術領域に明るく、いすゞ社長時代から開発を強化してきた片山氏は、こうした足元の課題解決に向けた基盤構築にも適任だとの見方がある。

また、こうした課題について自工会は、22年に経団連に発足したモビリティ委員会と連携し、自動車以外の産業を広く巻き込み、新しいビジネスを生み出しながら解決を目指す方針。すでに「電動車普及のための社会基盤整備」など、主要な七つの課題をまとめ、同委員会と共有している。豊田会長は同委員会委員長を務めており、1月以降も継続する考えで、モビリティ委員会のトップとして片山氏と連携していくことになる。

東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、「豊田氏と片山氏は関係が深く、今の(副会長の)メンバーで会長を託せるのは片山氏しかいない。トヨタがいすゞとの資本関係を復活させ、(トヨタやいすゞなどが共同出資する商用車の企画会社の)『CJPT』の枠組みを作っていることも、片山さんとだからできたこと」と、2人が連携しやすい関係にあると指摘する。

100年に1度の大変革期を迎える自動車業界を生き残るため、日本の自動車産業は協調を加速し、国際競争力を高めていく必要がある。片山新体制には自工会をまとめ上げる力が問われることになる。

豊田氏、変革期へ指導力発揮 課題向き合う体制構築

自工会の会長任期は通常1期2年。豊田章男氏は2012―14年と18―23年の期間、会長を務める異例の長期体制となった。23年1月にはトヨタ自動車の社長交代に合わせ自工会会長職も退任する意向を示したが、副会長らが慰留し続投を決めた。自動車業界は脱炭素や電動化など大変革期を迎えており、豊田会長の豊富な経験とリーダーシップが欠かせないとの判断だった。

約111万人が来場したジャパンモビリティショー2023

豊田会長の功績の一つに、自工会の正副会長が一丸となり課題に正面から向き合う体制の構築が挙げられる。副会長は軽自動車や商用車、2輪車を手がける各社の経営トップが勢ぞろい。理事会もスリム化し、活発な議論の場に変えた。「協調領域については本音に近い話し合いができる土台を構築した」と豊田会長は語る。

自工会事務局に対しても、その時々の正副会長の意向に振り回されるのではなく「自動車産業の代弁者」として覚悟と自覚を持つよう意識改革を促した。「自動車産業はみんなで担う産業、未来はみんなでつくるもの」(豊田会長)との共通認識を形成した。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)、米中対立をはじめとした経済デカップリング(分断)、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)などへの対応が課題となる自動車業界。豊田会長は脱炭素について「敵は内燃機関ではなく炭素」とのキーワードを発信。各地域の事情に応じた最適なエネルギーでモビリティーを動かす「マルチパスウェイ」の重要性を説いた。

モビリティー産業の未来を描く経団連モビリティ委員会の立ち上げにも尽力した。自動車産業の枠を超えて異業種やスタートアップとの連携が不可欠となる中、19年まで続いた「東京モーターショー」を「ジャパンモビリティショー」に刷新。5日まで開かれた同ショーには約111万人が来場した。


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日刊工業新聞 2023年11月23日

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