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トヨタ・ホンダ・三菱電機…上場企業の4―9月期、価格改定で収益底上げ

価格改定が企業業績を押し上げている。世界的なインフレが続く中、2023年4―9月期決算発表では自動車や電機などで価格改定が収益の底上げ要因となっている構図が鮮明になった。ただし急激な物価上昇は消費を冷え込ませる。持続するかは不透明だ。

乗用車メーカー7社は24年3月期業績について増収営業増益を見込む。大きな要因は、半導体不足の影響が緩和したことによる販売増と、販売価格の改定や商品構成の改善が進んだことだ。トヨタ自動車は24年3月期営業利益で前期比65・1%増の4兆5000億円を計画。販売増と構成改善に加え、「海外を中心とした価格改定」(宮崎洋一副社長)などで1兆6550億円の増益効果を見込む。

ホンダも23年4―9月期で4輪車事業の営業利益率が前年同期の1・3%から4・7%に改善した。販売増と北米を中心とする固定費体質の改善に加え、「『シビック』など中型系車両のコスト体質改善と商品価値に見合った値付けをきっちり展開していることが相まって今の利益率に到達した」(青山真二副社長)と価格改定の効果を説明する。

価格改定は総合電機の収益底上げにも貢献する。三菱電機の23年4―9月期は前年同期比で増収増益だったが、為替の円安傾向に加え、「価格転嫁の効果が大きく、510億円の増収増益効果があった」(増田邦昭常務執行役)。東芝は営業利益223億円のうち、価格改定などによる販売価格のアップにより115億円分の大幅な押し上げ効果があり、素材・輸送費高騰の影響分を上回った。富士電機も営業利益350億円のうち、販売価格のアップの寄与が79億円分あった。原材料価格や動力費高騰の影響を吸収できた。

アマダは23年4―9月期の売上高総利益率が同0・9ポイント増の44・6%に上昇。為替もあったが、既存商品に対する販売価格の改善により0・4ポイント増加し、資材費増加による0・3ポイントのマイナス影響を上回った。同社幹部は主力の板金加工機の販売価格の改善は22年度に続き進捗(しんちょく)しており「板金以外の事業でも値上げの効果が着実に出ている」とした。

素材業界では、三菱ケミカルグループが24年3月期予想で当期利益を5月公表比380億円増の1350億円に上方修正した。直接的な要因は子会社売却益などだが、業績を下支えする一つが価格改定。機能化学品を扱う部門の23年4―9月期コア営業利益で208億円のプラス要因。産業ガス部門でも欧米を中心とした価格改定などで155億円のプラス影響だった。

ファスニング関連商品を主力とするロブテックスは1―2月に価格改定を実施。地引俊為社長は「原材料価格や電気料金の引き上げなどで5%程度コストが上昇している。その分を補填するため、12月に価格改定する準備を進めている」とする。

野村証券の小高貴久シニア・ストラテジストは「内需関連で外食や食品関連は値上げがうまくいっている。価格転嫁が進んでいるようで、食品加工産業の業績が市場予想を上回るものが相次いでいる」と分析。一方で「足元で少し価格低下が見え始めている。実質賃金は大きくて低下しているため、収入に見合わない物価上昇になっており、財布の紐が固くなるリスクはある」と指摘する。


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日刊工業新聞 2023年11月20日

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