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パナソニックHDが自動車部品子会社を売却…第2、第3の事業売却の可能性も

パナソニックホールディングス(HD)は自動車部品事業子会社を売却する。米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメント(ニューヨーク市)のグループ会社と、自動車部品を手がけるパナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)の株式を一部売却することで基本合意した。売却で得た資金は重点投資領域の車載電池や、ヒートポンプ式空調機の海外展開に力を入れる空質空調事業などへ振り向ける見込み。パナソニックHDは2022年4月に持ち株会社制へ移行。成長分野への投資を加速するため、今後もグループ再編が加速しそうだ。

パナソニックHDの楠見雄規社長は5月に「今年度からは成長段階に向け事業ポートフォリオの見直しや入れ替えも視野に入れる」方針を示しており、今回の売却はその第1弾といえる。現在100%保有するPAS株式を、アポログループ会社が投資助言を行うファンドに50―80%売却する。24年3月末までの正式契約を目指す。売却金額や業績への影響は未定。

自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が進む中にあって、車載事業は本来成長事業のはず。ただ車載情報システムや車載カメラなどを手がけるPASはパナHDにとっての重点領域と位置付けられず、米テスラの電気自動車(EV)向けを中心にリチウムイオン電池(LiB)へ投資を加速するパナソニックエナジーとは明暗が分かれた格好だ。

とはいえ、PASが手がける車載コックピットシステム領域のソフトウエア開発や、高出力の車載充電器を核にした電力変換システム領域車載事業も、CASEで技術革新が進む中で成長を続けるためには積極的な投資が欠かせない。大規模な資金調達を実現するためにも、まずは外部資本との連携が必要と判断した。

アポログループは国際的な大手ファンドとしてEVや充電インフラなど自動車業界で多くの投資実績を持つ。PASをパナHDの持ち分法適用会社とし、社名やブランドも現状維持を想定している。

ただ最終的にはパナソニックグループから離れる可能性が高いだろう。やはり14年に投資ファンドに株式譲渡して持ち分法適用会社となった旧パナソニックヘルスケア(現PHCホールディングス)も、21年に上場を果たした。PASも将来の株式上場を視野に入れているという。

持ち株会社制への移行によって事業領域の入れ替えに乗り出すのは既定路線。成長領域以外の見直しはまだ始まったばかりだ。今回のPASにとどまらず、第2、第3の事業売却が続く可能性もある。


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日刊工業新聞 2023年11月20日

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