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造船事業が厳しいIHI、関連会社がLNG船を連続建造へ

JMUの“玉成”は成功するか。津事業所で異例のモノづくり
造船事業が厳しいIHI、関連会社がLNG船を連続建造へ

津事業所の新造船建造ドック

 ジャパンマリンユナイテッド(JMU、東京都港区)が津事業所(津市雲出鋼管町)で約7年ぶりに液化天然ガス(LNG)運搬船の建造に着手した。4月末にも1番船を進水し、2018年にかけて計4隻を順次引き渡す。数十億円規模の設備投資に踏み切り、リスク管理にも万全を期す。タンク製造を担うIHIと全面的に協力し、LNG船の“玉成”に取り組む。

 700トン吊(つ)り門型クレーンを備える津事業所の新造船建造ドック(長さ500メートル、幅75メートル)。東京エルエヌジータンカー、商船三井から受注した貨物槽容積16万5000立方メートル級LNG船1番船の巨大な船体がその姿をみせつつある。

 所内では2、3番船の鋼材加工、ブロック建造も急ピッチで進み、岸壁の大型ばら積み運搬船を引き渡した後は当面、LNG船一色になる見通しだ。14年春の設計開始から事前検討に2年以上を費やし、建造に備えてきたJMU。

 15―16年度にかけて塗装工場2棟4ブースの新設や、独自のLNGタンク用防熱パネル自動搬送装置などを導入。さらに「将来起こりうるリスク項目を100以上リストアップ」(津事業所所長の小松康夫常務執行役員)するなど工程管理にも細心の注意を払う。

 LNG船は海外製を含めて部品点数が多く、複雑な配管・電装工事を要し、塗装や溶接品質も厳しく問われる難工事。受注額が大きい半面、リスクもつきまとう。手がけられる造船所は限られる。

 ガス船建造を得意とする津事業所だが、今回のLNG船は過去最大。ブランクもあることから、ある程度の”授業料“を覚悟の上だが、ひとたび工程混乱や配員ミスなどを引き起こせば負の連鎖が待っている。

 所長を頂点に部やグループ、チーム、職区、班、個人と組織の末端まで日々の指示が行き届くようにし「2時間単位で確認している班もある」(同)。

海洋構造物工事で苦しむIHIの“救世主”に


 今回異例なのは津事業所だけで完結しないことだ。進水後にIHI愛知工場(愛知県知多市)に曳航し、同工場のドック内で4タンクを搭載。並行して艤装(ぎそう)作業を進め4カ月後に再び津事業所に戻し、引き渡しに向けた工事を継続する。「ピーク時には150人程度を愛知工場に派遣する」(小松常務執行役員)。

 「SPB」と呼ぶ自立角形タンクはIHIとJMUが開発した国産技術。スロッシングが発生せず、任意の液量を積み付けられる。形状自由度が高く、船体に合わせたタンク設計が可能。製造するIHIにとって、海洋構造物工事で苦しむ愛知工場の”救世主“としての期待も大きい。

 JMUに限らず、造船各社の足元需要は厳しい。海運市況低迷は長期化し、需給バランス悪化から船価に回復の兆しはみられない。

 JMU津事業所ではLNG船、スエズマックス型タンカーなど18―19年にかけての仕事量を抱えるが、先行き不安は尽きない。しかし、いかに効率良く高付加価値船を建造できるかが、造船大手が生き抜く条件になる。LNG船はその試金石といえる。
(文=鈴木真央)
日刊工業新聞2016年3月10日 機械面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
JFEホールディングスが45.93%、IHIが45.93が出資するJMU。IHIの業績悪化はプロジェクト管理の問題が大きい。モノづくりの力が弱っていないことを証明してもらいたい。

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