長距離・長時間運用型の水中無人機、防衛省が開発する狙い
防衛省は2027年度までに長距離・長時間運用タイプの水中無人機(UUV)を開発する。遠方から発進可能で自律航行できるUUVにする。また、多数のUUVを同時航行・制御できるようにすることで秘匿性を高めると同時に、海上での優位性を確保する。基本型はすでに完成済みで、改良型の試験を26年度にも始める計画。
基本型は全長10メートル、直径1・8メートルの円筒型。中央にモジュール艇体を取り付けると長さは15メートル程度になる。通信ではモジュール部に側面ソナーを装着して能力をアップする。
山口県岩国市にある大型水槽施設や民間企業の知見も積極活用する。
現行UUVは艦艇や陸上などからオペレーターによる操作で発進させ、任務終了後、回収する例が多い。尖閣諸島周辺など有事の際は護衛艦と潜水艦、航空機といった従来型装備に加え、相手に見つかりにくいUUVで優性を確保することがカギになるとされる。
具体的には、UUVを敵艦艇の付近まで進出させ、偵察情報を味方に伝達したり、日頃の警戒監視で特定の敵方艦艇を発見、追尾したりするといった活用が想定されている。
ただ、実現には現在のリチウムイオン電池(LiB)に燃料電池を組み合わせて航続距離を伸ばすほか、途中で漁網や民間船舶など障害物に遭遇した際の自律回避能力、複数のUUVを同時に航行・制御する水中通信技術などが必要となる。障害物の回避には人工知能(AI)を積極活用し、漁網や魚群などの画像データを学習させる。
UUVはさまざまな運用法が想定される。だが、それぞれで専門船型を開発していては非効率なため、モジュール化を推進する。後部の推進機構、前部のカメラ部分とは別に、中央部をモジュール化し、任務に合わせた構造にすることで開発期間を短縮するとともに、コスト削減も図る。