IHIは15年ぶり最終赤字…重工3社の通期予想押し下げる、航空エンジン損失の重荷
重工業大手3社が国際共同開発に参画する航空機エンジン「PW1100G―JM」の不具合問題が、各社の2024年3月期連結業績予想(国際会計基準)を押し下げる。3社は航空会社への補償や追加整備など将来の費用を参画シェアに応じて負担することになり、今期に損失を一括計上する。シェアの違いで濃淡はあるが、IHIが15年ぶりの最終赤字となる900億円の当期赤字を見込むなど多大な影響も出ている。
「PW1100G―JM」を搭載する欧エアバス製小型機「A320neo」は、各国の航空会社が短距離路線で運航する人気機種だ。不具合によって同エンジン約3000台の追加検査が必要になり、搭載機は24―26年に平均350機の地上駐機が見込まれる。3社は不具合に関与していないものの、契約により費用を分担した。
IHIは約1600億円の損失を計上する。シェアが約15%と3社で最も高く、巨額損失となる。通期予想を下方修正し、当期損益は前期の445億円の黒字から900億円の赤字に一転する。稼ぎ頭の航空機エンジンの急変を他事業で補いきれない。
シェアが約5・8%の川崎重工業も約580億円の損失計上が響き、通期予想を下方修正した。好調な2輪・4輪車部門が500億円の事業利益を稼ぐものの、当期利益は前期比77・4%減の120億円に落ち込む見通しだ。
三菱重工業はシェアが約2・3%と低いため、損失計上は200億円弱にとどまった。泉沢清次社長は「担当部位でこのようなことが起きないように品質を管理する」と、今後の教訓にする考えを示す。
通期予想は当期利益が同45・6%増の1900億円を見込む従来予想を据え置いた。主力製品の火力発電機器「ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)」の好調が寄与する。
IHI、川重も損失を一括計上することで25年3月期以降は航空機エンジンを成長軌道に戻せるとみる。
川重の山本克也副社長は「今回の損失でも中長期的な傾向は変わらない」と市場拡大を見通す。IHIの井手博社長は「リスクシェアのあり方を見直さなければならないかもしれない」と課題を挙げつつ、「この件を解決する中でエンジン整備を強くする」と決意を示す。