「従量制課金」導入へ…EV充電器の整備加速、経産省が策定した指針の全容
経済産業省は電気自動車(EV)など電動車用充電インフラの整備加速に向けたガイドライン(指針)をまとめた。2030年までの充電器の整備目標を従来目標比倍増の30万口に増やすほか、国内充電器の総出力を現状比10倍の約400万キロワットに引き上げる。政府は35年までに新車販売の全てを電動車にする計画を掲げる。官民で整備目標を共有し、EVユーザーの利便性向上など質の高い充電環境の整備を急ぐ。EVの普及拡大につなげる。
指針は日本自動車工業会(自工会)や充電サービス事業者、不動産関連の業界団体、自治体などが参加する有識者会議でまとめた。指針の柱である充電器の整備目標は完成車メーカーによるEVの投入計画や日本の住宅環境、民間や自治体が掲げる充電器の整備計画などを踏まえて算出した。全体の整備目標に加え、充電場所ごとの設置数や高速道路における設置間隔の目安も示した。
具体的には基礎充電を担う集合住宅などには30年までに10万―20万口を設置。高速道路ではインターチェンジ(IC)付近の充電器の活用も含めて70キロメートル間隔程度で配置する。
充電時間を短縮するため充電器の高出力化も急ぐ。急速充電器は高速道路では原則出力1口90キロワット以上を設置し、ユーザーの利用が集中する場所では数分で充電できる150キロワット対応を整備。ユーザーが充電量に応じて料金を支払う「従量制課金」は25年度をめどに導入する。事業者の収益性を確保し、持続的な充電サービスにつなげる狙いがある。
現在、国内では公共用充電器約3万基(口)が設置されている。国際エネルギー機関(IEA)の調査によると、22年のEV、プラグインハイブリッド車(PHV)1台当たりの公共用充電器の設置数は、オランダが0・23、中国が0・12、フランスが0・08、英国が0・05、米国とドイツがそれぞれ0・04と続く中、日本は0・07。オランダ、中国とは差があるものの、フランスなどと同等程度の数を確保する。
一方、充電器の利用環境といった質の面で課題が山積する。一つは充電器の出力だ。現在、国内に設置される急速充電器の平均出力は約40キロワット、普通充電も3キロワットが主流。充電時間が長く、EVユーザーにとって利便性が良いとはいえない。
設置場所ごとの課題もある。例えば、既設の集合住宅は充電器の設置に関する住民間の合意形成がしにくいことなどから、一戸建て住宅に比べ設置へのハードルが高い。充電器の高出力化への対応や従量制課金の導入も他国に比べ遅れていた。
「EVの普及と充電インフラの整備は表裏一体」(経産省幹部)。経産省は指針を通じて官民連携で課題を解決し、充電インフラに対する不安を解消することで、EVの普及拡大につなげることを目指す。今後も充電器向け補助金制度や充電器の高出力化に伴うエネルギーマネジメント、小売電気料金のあり方など充電環境の整備に必要な検討を続ける。