がん個別化医療が進展中、遺伝子分析で治療選択
がん治療で、より患者に適した「個別化医療」の考え方が広まっている。遺伝子を調べ、がんのタイプに合った治療を選択するといったことが一般的に行われるようになってきた。こうした中、エグザクトサイエンス(東京都千代田区、松村一弘代表)の「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が保険収載された。女性のがんで最も多い乳がんの再発リスクを個人ごとに分析、治療選択を支援してくれるもので、保険が活用できるようになったことで個別化医療がさらに進む。(安川結野)
国立がん研究センターによると、2019年に乳がんと診断された患者は9万7812人で女性のがんで最も多い。特に30―40代で増え始める。また近年、患者数が全体的に増加傾向にある。
乳がんは遺伝子変異やホルモン受容体の有無によって治療を選択し、さらに再発リスクが高い患者は予防として化学療法を行うなど、精密治療が進んでいる。一方、化学療法の実施の判断において聖路加国際病院乳腺外科の喜多久美子副医長は「化学療法は有害事象も多いため、本当にメリットがある患者を見極めて判断することが重要」と説明する。
オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラムは乳がん組織の21の遺伝子の発現状況を調べ、アルゴリズムによって再発率と化学療法の効果の予測を数字で示す。同プログラムが適応となるのは、がん組織のホルモン受容体が陽性かつHER2たんぱく質が陰性のタイプで、乳がん患者の半数以上を占めるという。化学療法は費用が高額で治療期間も長いため、身体的、経済的に患者にとって大きな負担となる。再発リスクや治療効果予測が数値化できることで、医師だけでなく患者本人も納得の上で治療方針を決められるというメリットがある。
同プログラムは04年に米国で開始し、これまで欧米を中心に90カ国以上で活用されている。海外が先行する背景を、エグザクトサイエンスの木村重雄コマーシャルディレクターは「欧米では比較的ベーシックな保険でカバーされている」と説明する。これまで日本においては自費だった同プログラムが保険収載となったことで、実際に導入する医療機関が大幅に増加した。遺伝子検査の活用の幅が広がり、個人に合わせたがん治療が浸透しそうだ。