車塗装工程4割低温下、旭化成が開発した硬化剤新グレードの実力
旭化成は塗料などに使われる硬化剤「デュラネート」の新グレードを開発した。揮発性有機化合物(VOC)排出削減に寄与する水系塗料向けで、硬化温度を80―90度Cに低温化した。自動車の塗装工程での焼き付け温度を従来比約4割下げられることで、二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献できるとみる。2024年末―25年初頭での市場投入を計画する。
デュラネートの新グレードとして開発した「X6022」はVOC抑制に寄与する水系塗料の硬化剤。旭化成は90―100度Cで硬化する水系塗料向け硬化剤「WM44―L70G」などを展開しており、その技術やノウハウなどを生かした。溶剤系塗料は揮発した際の環境負荷などが課題だった。
同社がX6022の需要として見込むのが、自動車ベース塗料用の硬化剤だ。自動車塗装では焼き付け工程の温度が140度C程度で実施されているが、X6022を使うことで80―90度Cに下げられるとみている。
特に樹脂を使うバンパーやルーフなどは金属と耐熱性が異なるため、従来はボディーと別ラインで塗装している。X6022によって塗料が硬化する温度が下がれば、一貫したラインで塗装できるようになるとみる。結果として塗装ラインを減らすことができ、CO2排出削減などにもつながる。
同社は電気自動車(EV)シフトが進む中で、軽量化に向けて金属部品を樹脂化する動きが増えると予測。拡大が見込める塗装の焼き付け温度の低温化ニーズに対応できるようにする。
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日刊工業新聞 2023年10月30日