ニュースイッチ

ボッシュ・デンソー…「ティア1」がソフト開発注力で狙う新たな立ち位置

ボッシュ・デンソー…「ティア1」がソフト開発注力で狙う新たな立ち位置

ボッシュはソフトとハードを別々に開発する環境作りを目指す(ジャパンモビリティショー2023の同社ブースの展示)

自動車メーカーが車の電動化とともに力を入れるのが、ソフトウエアを更新することで車の価値を高めていくソフトウエア定義車両(SDV)の開発だ。ネットワーク経由でソフトを更新する技術「OTA」などを使って車の機能を増やし、購入時よりも価値を高める。車の魅力がハードの性能だけでなく、ソフトで提供する機能やサービスによって評価される機会が増える。車のSDV化に対応し「ティア1」と呼ばれる1次サプライヤーは、ソフト開発を促進する環境作りや開発体制の強化などを進め、存在感を高めようとしている。(編集委員・錦織承平)

ハードと独立、費用・期間減

独ボッシュ日本法人のボッシュ(東京都渋谷区)のクリスチャン・メッカー副社長はSDV化に対し、「車のハードと独立したソフトを開発する」と話す。従来は機能ごとにハードとソフトを合わせて作っていたが、グループ会社のイータスが提供する基本ソフト(OS)を使い、ソフトとハードを別々に開発する環境作りを目指す。

スマートフォンのようにハードが変わっても同じソフトを使えれば、ソフトやアプリケーション開発の費用や期間を低減できる。OSの仕様を公開しさまざまなアプリやサービスの開発を促すことで、車の機能を増やし、ユーザーのメリットにつなげる狙いだ。

AIなど導入、開発速度2倍

デンソーはSDV向けのソフトが市場投入フェーズを迎えるのに対応し、開発体制の強化を進めており、半導体IP(回路設計)開発と車載ソフト開発のグループ会社2社をデンソー本体に合併する。電子部品や複数の電子制御ユニット(ECU)を連携して車全体のシステムを統合制御する電子プラットフォームや、OTA技術の開発を加速し、半導体やソフトを合わせた付加価値の高いシステムを開発する考え。

林新之助デンソー社長

車載ソフト開発の経験を生かした人工知能(AI)などを導入し「開発スピード2倍を実現する」(林新之助デンソー社長)と意気込む。開発する半導体やソフトの外販、ソリューションビジネスとしての展開も視野に入れる。

電動化とソフト領域で採用や配置転換などを進め、2025年までの4年間に計4000人を増強する。

デジタル基盤、機能実装支援

日立Astemo(アステモ、東京都千代田区)は、完成車メーカー向けにSDVを支えるデジタルプラットフォーム「IoV」の提案を始めた。IoVは車の新機能を開発するためのデータ収集・分析から新機能の開発・検証・実装までのサイクルを繰り返し行えるデジタル基盤。自社の電動パワートレーン(駆動装置)、安全運転支援システム、シャシーなどを束ねる車載側のセントラルECUとクラウドシステムを連携して機能する。

SDVの広がりに伴って完成車メーカーはユーザーにより近い、サービスやアプリの開発といった方向にリソースを割いていく傾向がある。これに呼応して大手のティア1は、車載OSや車の新機能の開発・提案など、サプライチェーン(供給網)のより上位にビジネスを広げる。「モビリティー社会のティア1」(デンソー)や「ティア0・5」(日立アステモ)といった新たな立ち位置を取ろうとしている。


【関連記事】 デンソーも注目、岐阜の「改革マスター」とは?
日刊工業新聞 2023年10月30日

編集部のおすすめ