「職務記述書提示」は半分…博士ジョブ型インターン伸び悩み
博士人材のジョブ型研究インターンシップ(就業体験)に関心がある企業のうち、ジョブディスクリプション(JD、職務記述書)提示まで進むのは半分ほど―。文部科学省による「ジョブ型研究インターンシップ」事業で、このような傾向が明らかになった。日本人学生よりも留学生の方が積極的で応募の7割、マッチング成立案件の4割を占めている。企業も学生も伝統的な制度や意識からもう一歩、踏み出すことが求められそうだ。
文科省が2021年度に試行し、22年度から本格展開を始めたジョブ型研究インターンシップは、博士後期課程の学生が対象だ。企業が業務内容を明記したJDを示し、その内容を踏まえて博士学生が応募する。マッチングが成立すれば、2カ月など長期の有給インターンシップとなり、単位も認定される。博士学生は学部生や修士学生と違い、就職活動時期が制限されていない。そのためジョブ型雇用につながりやすいと期待されている。
22年度は同事業の会員企業50社のうち23社が64件のJDを示し、計73人を募集した。会員のうち半数がJDを提示し、その募集は平均3件と多かった。一方でジョブ型雇用・インターンシップを自社テーマと捉えて会員になった企業でも、人事・労務の制度整備に遅れがあり、対応は分かれているという。
会員大学は64校、登録学生数は483人(うち留学生が175人)。21年度の51大学の304人に対し、対象を理系だけでなく文系にも広げ、大学数も増えたことで登録が伸びた。しかし応募は58件(同38件)、マッチング成立数は18件(同7件)とあまり多くない。
留学生は登録が全体の4割弱、応募は同7割を占め、日本人学生に比べてアグレッシブだ。グローバル競争に有益な人材と、採用などで関わりを深めたいトップクラス企業のニーズに合い、ウィン―ウィンの関係になっているようだ。
JDの分野は情報系のほか、化学や機械が多かった。文部科学省の担当者は「ジョブ型といっても双方とも専門を狭く捉えては進まない。学生には、自身の課題設定・解決能力を実社会で試す体験だと考えて応募してほしい」(高等教育局学生支援課)と強調する。今後は、研究力強化に向けた博士人材支援の省内別事業と連動することも検討している。