三菱自動車が正念場…中国撤退、主力市場は守れるか
三菱自動車は世界最大の自動車市場である中国での車両生産と販売から撤退する。現地で進む電動車シフトや現地メーカーとの競争激化により販売不振が続き、3月から広州汽車集団との合弁会社の工場を停止していた。合弁を解消し、在庫がなくなり次第、販売を終了する。今後は主力の東南アジア諸国連合(ASEAN)市場に注力するが、同市場にも中国メーカーが進出している。三菱自は主力市場を守り抜くための正念場を迎えている。
合弁会社「広汽三菱汽車」の出資比率は広州汽車50%、三菱自30%、三菱商事20%。三菱自と三菱商事が株式持ち分を広州汽車に譲渡する。合弁解消時期は未定。生産機能は広州汽車が電気自動車(EV)「Aion」の生産に充てる。
三菱自は合弁解消により、2024年3月期連結決算に特別損失243億円を計上する。業績予想には織り込み済みのため、変更しない。広汽三菱傘下の販売会社に、三菱自が30%、三菱商事が20%を出資し、販売済みの車のアフターサービスを継続する。三菱自は中国の別の合弁会社でのエンジン生産は継続する。
広汽三菱の工場はガソリン車を中心に生産していた。三菱自は22年11月にスポーツ多目的車(SUV)の新型「アウトランダー」のハイブリッド車(HV)も投入したが、販売は振るわず、撤退に向けて広州汽車と交渉していた。
三菱自は新型1トンピックアップトラック「トライトン」や新型SUV「エクスフォース」を投入するなど、世界販売台数の3割を占める東南アジアに今後一層注力する方針。ただ、タイやインドネシアなどではEV普及策により、中国製EVが販売を増やしている。
三菱自の加藤隆雄社長も7月に「(中国で)余剰になったEVが他国に流れることにどう対応するかなど、状況を見て判断したい」と述べ、東南アジアでも中国車との競争に対応する必要性を示唆していた。主力市場を守るため、どのような戦略を取るのかが焦点となる。
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