住友林業とトヨタのコンセプトカーや新国立競技場は林業復活の象徴に?
住友林業はトヨタ自動車が企画・製作するコンセプトカー「SETSUNA」のボディー(外板)をトヨタ自動車と共同開発した。SETSUNAは人とクルマの新たなつながりを表現するコンセプトカー。手入れをすることで世代を超えて使い続けられることなどから素材に木を選んだ。
ボディーは杉、インパネ・シートはセンノキ、ステアリングはヒノキ、フレームはカバ、フロアはケヤキで、組み立てにはクギやネジを使わない伝統技法を取り入れた。4月にイタリアで開かれる「ミラノデザインウィーク」に出展する。
住友林業は木部の設計や加工、組み立ての提案のほか、樹種の選択や木構造の知識をトヨタ自動車と共有。高知県の社有林の杉も提供した。
―2016年の重点施策は。
「消費再増税を控えて駆け込み需要が出てくる。展示場の新設や建て替えなど手は打っている。住宅が密集する東京の防火地域でも木造の良さを発揮した3階建て、4階建てが建てられることを周知していきたい」
―非住宅の木造建築に力を入れています。
「木の良さは人間の体にやさしい性質を持つところだ。公共建築物に国産材の利用を推進する法律が10年に施行されて以来、学校や商業施設、高齢者向け施設など中・大規模の建築物に利用が広がっている。地元産の木材利用を推進する自治体も増えている。『ビッグフレーム構法』やCLT(直交集成板)など適材適所で木造建築を推進したい。全国対応可能な調達のネットワークも活用する」
―バイオマス発電事業の現状は。
「北海道紋別市と苫小牧市のバイオマス発電所が12月に操業を始める。戦後の木材不足で盛んに植えられた木が現在、伐採時期を迎えているにもかかわらず、使う場所がなく捨てられている。こうした木材資源を発電所で有効活用する。電力はニーズがあれば既存の電力会社以外にも販売を検討する」
―海外では米国東部の有力ビルダーを買収しました。
「金利動向を注視しつつ地域に密着した成長戦略を立てていく。品質管理のあり方など当社の持つノウハウを注入していく。米国と豪州を合わせて年間8000棟規模まで早期に拡大したい。オーガニックな成長だけで可能と考えているが、哲学を共有できるパートナーがいればさらなるM&A(合併・買収)も視野に入れる」
―16年度から新しい中期経営計画がスタートします。方向性については。
「木という素材を最大限に生かしながら、どう森に返していくかを考えれば、事業の方向性は見えてくる。森林経営から注文住宅、建材、生活サービスに至るまで事業領域は幅広いが、まだまだ提供できる商品・サービスはある。木の付加価値を最大限に生かしながら、新たな成長のステージに向かっていきたい」
【記者の目・林業復活は積年の課題】
新国立競技場の木がふんだんに使われたデザイン案に「木の良さを知ってもらう良い機会になる」と喜ぶ市川社長。新しい中期経営計画には中・大規模の木造建築物の普及促進に向けた取り組みも明記される見通しだ。国土の7割を森林が占める日本にとって林業復活は積年の課題。一層の注力を期待したい。
(聞き手=斎藤正人)
ボディーは杉、インパネ・シートはセンノキ、ステアリングはヒノキ、フレームはカバ、フロアはケヤキで、組み立てにはクギやネジを使わない伝統技法を取り入れた。4月にイタリアで開かれる「ミラノデザインウィーク」に出展する。
住友林業は木部の設計や加工、組み立ての提案のほか、樹種の選択や木構造の知識をトヨタ自動車と共有。高知県の社有林の杉も提供した。
市川晃・住友林業社長インタビュー「木の良さを最大限に」
日刊工業新聞2016年1月28日
―2016年の重点施策は。
「消費再増税を控えて駆け込み需要が出てくる。展示場の新設や建て替えなど手は打っている。住宅が密集する東京の防火地域でも木造の良さを発揮した3階建て、4階建てが建てられることを周知していきたい」
―非住宅の木造建築に力を入れています。
「木の良さは人間の体にやさしい性質を持つところだ。公共建築物に国産材の利用を推進する法律が10年に施行されて以来、学校や商業施設、高齢者向け施設など中・大規模の建築物に利用が広がっている。地元産の木材利用を推進する自治体も増えている。『ビッグフレーム構法』やCLT(直交集成板)など適材適所で木造建築を推進したい。全国対応可能な調達のネットワークも活用する」
―バイオマス発電事業の現状は。
「北海道紋別市と苫小牧市のバイオマス発電所が12月に操業を始める。戦後の木材不足で盛んに植えられた木が現在、伐採時期を迎えているにもかかわらず、使う場所がなく捨てられている。こうした木材資源を発電所で有効活用する。電力はニーズがあれば既存の電力会社以外にも販売を検討する」
―海外では米国東部の有力ビルダーを買収しました。
「金利動向を注視しつつ地域に密着した成長戦略を立てていく。品質管理のあり方など当社の持つノウハウを注入していく。米国と豪州を合わせて年間8000棟規模まで早期に拡大したい。オーガニックな成長だけで可能と考えているが、哲学を共有できるパートナーがいればさらなるM&A(合併・買収)も視野に入れる」
―16年度から新しい中期経営計画がスタートします。方向性については。
「木という素材を最大限に生かしながら、どう森に返していくかを考えれば、事業の方向性は見えてくる。森林経営から注文住宅、建材、生活サービスに至るまで事業領域は幅広いが、まだまだ提供できる商品・サービスはある。木の付加価値を最大限に生かしながら、新たな成長のステージに向かっていきたい」
【記者の目・林業復活は積年の課題】
新国立競技場の木がふんだんに使われたデザイン案に「木の良さを知ってもらう良い機会になる」と喜ぶ市川社長。新しい中期経営計画には中・大規模の木造建築物の普及促進に向けた取り組みも明記される見通しだ。国土の7割を森林が占める日本にとって林業復活は積年の課題。一層の注力を期待したい。
(聞き手=斎藤正人)
日刊工業新聞2016年3月8日 自動車面