10年ぶり低水準も…回復の力強さ欠く「電子部品需要」にプラス材料
電子部品需要の回復が力強さを欠いている。電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本メーカーによる7月の電子部品世界出荷額は、前年同月比3%減の3622億円だった。マイナスは9カ月連続。スマートフォンメーカーの在庫調整が一巡した後もスマホ販売が盛り上がらず、部品の出荷は勢いを欠いた。8月は新型スマホ発売前の作り込みなどで出荷も一定の増加が期待できるものの、回復の持続力が焦点になる。
品種別に見ると、スマホなどの中で電気を一時的に蓄えたり放出したりして回路のノイズを除去し、電圧を安定させるコンデンサーは同2%減の1215億円。マイナス幅は7月より縮小したが、前年同月の実績を超えられなかった。スマホメーカーによる在庫削減は7月までにほぼ一巡したもようで、実需に見合った注文が電子部品メーカーに入り始めたが、実需が想定以上に伸び悩んでいる。
機能の成熟や中古市場の拡大を背景に買い替え周期が延びていたところに、世界的なインフレや中国景気の低迷が追い打ちをかけた。香港の調査会社カウンターポイントリサーチによると、4―6月期の世界のスマホ販売台数は前年同期比で8%減と、8四半期連続で減少。2023年通年でも10年ぶりの低水準と予測した。
他方、プラス材料もある。人工知能(AI)の開発・運用に必要な高出力サーバー関連投資の活発化だ。
野村証券の秋月学アナリストはリポートで「高出力の(サーバーに搭載される)画像処理半導体(GPU)や中央演算処理装置(CPU)は、電源コイルの使用個数が汎用サーバー向けに比べ多い」と指摘。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターで需要の押し上げ効果が期待できるとした。JEITAによると7月のインダクター出荷は前年同月比1%減の261億円で、コンデンサーより減少幅は小さかった。
8月以降は米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の新機種発売の効果も加わる。ただ中華系スマホメーカーの一部は低価格スマホの生産削減を行っているとみられ、スマホ向け部品需要全体の回復につながるかは不透明だ。
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