“グーグル検索"とは一線を画す!?AIで口コミ解析
電通国際情報サービスとユービックが実用化したデジタルキュレーションの中身
電通国際情報サービス(ISID)はUBIC(ユービック)と共同で、電子商取引(EC)サイトなどに書き込まれた膨大なコメントなどをもとに、消費者一人ひとりの嗜好(しこう)にあった商品や店などを探し出して提案する「デジタルキュレーションサービス」を実用化した。UBICが持つ人工知能(AI)技術と、マーケティング分野でISIDの培ってきたノウハウを掛け合わせ、「多様なテキスト(文章)資産の中から“眠れる価値”を発掘する」(荻原克行コミュニケーションIT事業部データソリューション開発部長)。
両社が共同開発に着手したのは2015年3月。以降9カ月間にわたり、機能開発と検証を繰り返し、EC・口コミサイトの運営事業者向けにサービスを構築。これを先駆例として、2月から個別要件に応じたシステム開発や導入支援に乗り出した。
キュレータとはデータ群の中から、その人がいま必要としている情報を把握して、察知して提供してくれる人を指す。これをAIなどを駆使して実行するのがデジタルキュレーションだ。
もとよりソーシャルメディア上の膨大なコメントをすべて読み込むには限界がある。このため口コミサイトの順位を見たり、コメントの良しあしで判断したりするのが一般的だが、そもそも情報の価値は人によって異なる。「人が本当に探したいものは文脈のニュアンスでしか分からず、単語のつなぎ合わせの検索では難しい」(荻原部長)。
デジタルキュレーションは既存手法とは異なり、ソーシャルメディアなどの書き込みをAIにすべて読み込ませて、必要なことを文脈として入力することで、マッチングする仕組み。それをマーケティングに応用したのが今回のミソだ。
例えば本や映画を探す場合―。好みの作品を10程度指定するだけで、AIがその人の嗜好を覚え込み、インターネット上にある映画や本に関するコメント群から、嗜好が似たものを探し出す。
この分析で得た情報から潜在的な嗜好パターンを類推し、例えば「好みと思われる宿」を提案するといったジャンルを超えたサービス提供も可能。「J―POPの歌詞を選ぶと、その歌詞の文脈に応じて対応するカクテルを提示するなど、さまざまな用途展開が期待できる」(同)。
UBICはAIのエンジンを独自開発している。メールの不正検出にAIを適用し、裁判の証拠を見つけ出す「電子証拠開示(eディスカバリー)」は米国で利用されている。用途展開の第1弾として、デジタルマーケティングでISIDと協業した。
一方、電通グループのISIDはマーケティング分野で豊富な知見を持っている。デジタルキュレーションでは電通との連携を図るとともに、既存の顧客企業の課題解決にも生かす考え。製造業向けでは、技術文書や日々の日報などの新たな価値をAIで見いだそうとしている。
(文=斉藤実)
嗜好察知、顧客に「最適」提案
両社が共同開発に着手したのは2015年3月。以降9カ月間にわたり、機能開発と検証を繰り返し、EC・口コミサイトの運営事業者向けにサービスを構築。これを先駆例として、2月から個別要件に応じたシステム開発や導入支援に乗り出した。
キュレータとはデータ群の中から、その人がいま必要としている情報を把握して、察知して提供してくれる人を指す。これをAIなどを駆使して実行するのがデジタルキュレーションだ。
もとよりソーシャルメディア上の膨大なコメントをすべて読み込むには限界がある。このため口コミサイトの順位を見たり、コメントの良しあしで判断したりするのが一般的だが、そもそも情報の価値は人によって異なる。「人が本当に探したいものは文脈のニュアンスでしか分からず、単語のつなぎ合わせの検索では難しい」(荻原部長)。
デジタルキュレーションは既存手法とは異なり、ソーシャルメディアなどの書き込みをAIにすべて読み込ませて、必要なことを文脈として入力することで、マッチングする仕組み。それをマーケティングに応用したのが今回のミソだ。
J―POPの歌詞を選ぶと、文脈に合ったカクテルが
例えば本や映画を探す場合―。好みの作品を10程度指定するだけで、AIがその人の嗜好を覚え込み、インターネット上にある映画や本に関するコメント群から、嗜好が似たものを探し出す。
この分析で得た情報から潜在的な嗜好パターンを類推し、例えば「好みと思われる宿」を提案するといったジャンルを超えたサービス提供も可能。「J―POPの歌詞を選ぶと、その歌詞の文脈に応じて対応するカクテルを提示するなど、さまざまな用途展開が期待できる」(同)。
UBICはAIのエンジンを独自開発している。メールの不正検出にAIを適用し、裁判の証拠を見つけ出す「電子証拠開示(eディスカバリー)」は米国で利用されている。用途展開の第1弾として、デジタルマーケティングでISIDと協業した。
一方、電通グループのISIDはマーケティング分野で豊富な知見を持っている。デジタルキュレーションでは電通との連携を図るとともに、既存の顧客企業の課題解決にも生かす考え。製造業向けでは、技術文書や日々の日報などの新たな価値をAIで見いだそうとしている。
(文=斉藤実)
日刊工業新聞2016年3月7日モノづくり面