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青学・都市大…私大、理工系強化に絞る知恵

青学・都市大…私大、理工系強化に絞る知恵

都心に理系学部新設となれば、注目度アップが期待される(青山学院大の青山キャンパス)

文部科学省は理工系強化策「大学・高専機能強化支援事業」で、初年度の2023年度に約120件を選定した。デジタル・グリーンの人材育成であれば資金の後押しがあるため、大学からは「この機会を生かさない手はない」という歓迎と同時に、「動かないとマイナスのレッテルを貼られてしまう」との声も挙がる。既存の理工系学部を核に再編を検討する青山学院大学、埼玉工業大学、東京都市大学の事例を見る。(編集委員・山本佳世子)

都心に拠点検討

「『青山キャンパス(東京都渋谷区)に、理系の統計・データサイエンス(DS)学部を新設』と打ち出せれば、インパクトはかなりのものになる」。こう思案するのは選定を受け、新学部設置の検討を本格化した青山学院大の稲積宏誠副学長だ。

構想原案の土台となるのは、相模原キャンパス(相模原市中央区)にある理工学部、社会情報学部で取り組んできたDSだ。しかし、新学部の設置は文系学部がある都心のキャンパスに、というのがポイントだ。そうなれば文系学部のDS教育や、大企業の新入社員教育などにも広げられるからだ。

しかし「問題は山積み。全学の合意を得るのに時間がかかるし、学部でなく学科や研究センターに変わるかもしれない」(稲積副学長)という。不安要素の一つは受験生集めだ。新学部は相模原の学部と競合する可能性がある。もう一つは文系学部の定員減を組み合わせた場合の既存学部の反対だ。そのため1学年60人と小ぶりの想定にしている。

文科省の公私立大向け「支援1」は幅が広い。「認可・届出前」「開設準備中」「開設後4学年がそろう年度の終了まで」と各フェーズをカバーする。そのためフェーズⅠで課題が多く、新学部設置に届かない大学は少なくないとみられている。

情報系強化で再挑戦

埼玉工業大学は同事業のうち高度人材育成が対象の「支援2」に応募したが選定されなかった。工学部情報システム学科「自動運転専攻」については予定通り25年度に新設する。地元の埼玉県深谷市や企業と6月に「深谷自動運転実装コンソーシアム」を立ち上げるなど、研究の先進性を教育へつなげるタイミングにあるためだ。

自動運転専攻の新設計画は予定通り進める(埼玉工大の本部棟)

あわせて内山俊一学長は、「24年度は(選定の可能性が高い)支援1に切り替え、再挑戦する。情報系人材育成の強化計画を練り直す」と、次の手を打とうとしている。

DX人材4割目標

東京都市大学は支援1、2をダブルで獲得した大学の一つだ。27年度にデジタル理工学部を新設し、「将来は大学院を含めて全学生の4割をデジタル変革(DX)人材にする」と三木千寿学長は鼻息が荒い。新学部の学生定員は、文系寄りの学部だけでなく理工学部などからも振り分けるとした。単純な「文系縮小、理系拡大」に比べて全学の理解が得やすいとみられる。

少子高齢化のスピードは予想以上に速く、「10年先にはどの大学も定員減に動かざるを得ない」とも聞く。そのため新設の計画に動けるのは、あと数年だ。最後のチャンスに向け、各大学の動きは加速しそうだ。

日刊工業新聞 2023年09月08日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
理工系を持つ大学は、『デジタル系の教育強化は当然』と認識している。しかし私立大は少子化の中での、経営への寄与をよく考える必要がある。総合大学の中でのバランスの悩み、理工系単科大学での学内理解や政府施策への依存度など、3大学それぞれだ。同テーマで各大学を引き続きを取材していきたい。

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