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“動く洋上美術館”…豪華客船の旅復活へ、「飛鳥Ⅲ」の全容

“動く洋上美術館”…豪華客船の旅復活へ、「飛鳥Ⅲ」の全容

新造大型客船「飛鳥Ⅲ」は横浜港を母港とした(イメージ)

郵船クルーズ(横浜市西区、遠藤弘之社長)は、2025年に日本船籍で最大の新造客船「飛鳥Ⅲ(アスカスリー)」を就航する。現行の「飛鳥Ⅱ」と合わせて2隻体制とし、より多くの旅客を受け入れる。「日本のクルーズ人口は少なく、開拓余地がある」(遠藤社長)。コロナ禍で打撃を受けたクルーズ船業界が復活ののろしを上げる。(梶原洵子)

郵船クルーズは横浜市との共同会見で、船名を飛鳥Ⅲとし、船籍港を横浜とすると発表した。日本を代表する豪華クルーズ船の名前を受け継ぐ。「日本のクルーズ文化を未来へつなぐ」(遠藤社長)との考えだ。

飛鳥Ⅲの総トン数は5万2000トン。飛鳥Ⅱと同規模ながら、乗客定員は約740人と飛鳥Ⅱより100人以上少ない。乗員数は維持し「より行き届いた、日本船ならではの上質なサービスを提供する」(同)。

こだわりは日本文化を伝える美術品や工芸品だ。船名の揮毫(きごう)は書家の矢萩春恵氏によるもの。船内には漆芸家で人間国宝の室瀬和美氏の約9メートルの蒔絵(まきえ)や、画家の千住博氏や田村能里子氏をはじめ数多くの作家の作品を配し、“動く洋上の美術館”とする。

また、同船は日本のクルーズ船で初めて液化天然ガス(LNG)燃料と陸上電力受電装置を採用した。横浜市の山中竹春市長は「脱炭素に力を入れる横浜を船籍港に選んでくれてうれしい」と歓迎の言葉を述べた。

日本では20年3月以降、国際クルーズの運航が停止していたが、23年3月から本格的な運航を再開した。政府は観光立国推進基本計画の一環で、25年に訪日クルーズ旅客をコロナ禍前のピーク水準の250万人まで回復させる目標を掲げている。

日刊工業新聞 2023年09月18日

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