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三菱電・三菱重工の発電機事業統合…世界に打ち勝つシナジー創出できるか

三菱電・三菱重工の発電機事業統合…世界に打ち勝つシナジー創出できるか

GTCCを採用する上越火力1号機

三菱電機三菱重工業が発電機事業を統合する。2024年4月に共同出資会社を設立し、発電機の製造・保守事業などを集約することでコストダウンを図りつつ、サービスを向上。国際競争力を高めることで、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンス、東芝など発電機事業のライバル企業と競っていく。さらに大型発電用タービンで世界トップシェアである三菱重工との相乗効果も期待する。(編集委員・小川淳、戸村智幸)

三菱電機と三菱重工の両社の事業で象徴的な発電所がある。22年12月に1号機の営業運転を始めた東北電力の上越火力発電所(新潟県上越市)だ。天然ガスを燃料に、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた2重の発電方式である最新鋭の「ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)」を採用する。

ガスタービンなどの事業を統括する三菱重工の土師俊幸常務執行役員は「当社のガスタービンと三菱電機の発電機の組み合わせなどで世界最高水準の発電効率(63・3%)を達成した」と述べる。

三菱重工は14年、日立製作所と火力発電機器事業を統合し、三菱日立パワーシステムズ(MHPS、当時)を発足、旧日立製の発電機を手にした。三菱重工は元々、大型ガスタービン向けを中心に三菱電機製の発電機を多く採用してきた。MHPS発足後は、地域や発電容量に応じて三菱電機製と自社製を使い分けてきた。今回の統合は旧日立製と三菱電機製の発電機が統合することも意味する。

統合対象は火力、水力、原子力発電における発電機の設計製造と保守点検など。世界的なカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の流れの中、水力や原子力だけでなく、最先端の技術を駆使した高効率の火力発電にも注目が集まる。また、天然ガスのほか、水素やアンモニアの混焼による発電も期待される。さらに、再生可能エネルギー普及に伴う調整用電源としても需要が伸びる。

三菱電機の浜本総一上席執行役員(電力・産業システム事業本部長)は「発電事業は非常に国際競争が激しくなっている。その中で発電機もきっちり競争力を高め、成長を目指していく」と統合の意図を説明する。

新会社は神戸市内に本社を設置し、売り上げ規模は年間数百億円を見込む。発電機の製造は三菱電機の電力システム製作所(神戸市兵庫区)に集約し、三菱重工の日立工場(茨城県日立市)では発電機の保守点検を継続する。

統合で調達コストの削減やリードタイムの短縮、工場の稼働率の向上などを実現する。将来的には新ブランドでの製品開発も視野に入れる。また両社それぞれが発電機やタービン関連の海外拠点を持つため、保守点検などのサービスを拡充することも狙う。こうした施策で競争力を高め、発電機事業をよりグローバルに展開する。

ガスタービンの拡販後押し

新会社が長期的に三菱重工のガスタービン拡販を後押しする効果も期待される。22年の世界シェアは1位で、GTCCが発電効率や低炭素化を武器に世界で受注を重ねる。新会社により発電機の性能やコスト競争力が高まれば、発電機とセットの存在のガスタービンの競争力も強化される。三菱重工の泉沢清次社長は「発電機は大きな構成要素だ」と統合の意義を強調する。

三菱重工は発電機事業統合でガスタービンの競争力強化を狙う(同社提供)

土師常務執行役員は「効率の良い発電機を採用すれば、発電プラント全体の効率が上がる」と波及効果に期待する。将来の普及を狙う水素混焼・専焼ガスタービンなどエネルギートランジション(移行)関連の競争力にもつながる。

【続き】三菱電機・上席執行役員と三菱重工業・常務執行役員に統合の狙いを聞く
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日刊工業新聞 2023年09月04日

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