生成AIの企業活用促進…MS・メタと協業を積極化するIBMの狙い
米IBMは生成人工知能(AI)市場の拡大に向けて、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)との協業を積極化している。この一環でIBMは今般、米マイクロソフト(MS)との協業を強化し、生成AIの活用促進に必要な専門知識と技術を提供する新サービスを発表した。IBMコンサルティングが中心となり、MSの生成AIサービス「アジュール・オープンAIサービス」への実装支援などに注力する。また、米メタとの連携も加速する方針だ。(編集委員・斉藤実)
新サービスは米オープンAIが開発した「GPTシリーズ」などの大規模言語モデル(LLM)を適用できるフルマネージド型のAIサービス。MSの「アジュール・マーケットプレース」を通じて、開発者やデータサイエンティスト(分析官)向けに提供する。
生成AIの企業活用を加速するため、IBMとMSは新サービス以外にも広範な分野で協力する。IBMコンサルティングが提供する「グローバルS2Pプラットフォーム」にアジュール・オープンAIサービスを実装し、企業の調達・購買プロセスから新たな洞察を得られるように支援する。
医療分野ではアジュール・オープンAIサービスを活用し、複雑な医療記録や医療方針を自動的に取り込んで分析することで、事前承認プロセスの自動化を支援する。
このほか、生成AIを用いた財務リポートの要約や、音声版の同時作成といったユースケース(活用例)でも協力している。
一方、米メタとの協業では、IBMの企業向けAIプラットフォーム(基盤)「ワトソンx」において、メタのLLM「Llama2―chat」(700億パラメーター版)に対応する。機械学習フレームワーク「PyTorch(パイトーチ)」やワトソンxで使われているクエリー・エンジン「Presto(プレスト)」など、メタが開発したオープンソースプロジェクトとも連携する。
IBMは独自のAIモデルと、サードパーティーが提供するAIモデルの両方を提供している。ワトソンxにおいてAI開発者はIBMのAIモデルと、「Hugging Face(ハギングフェイス)」と呼ばれるコミュニティーが提供するAIモデルを活用できる。今後はメタのLlama2が利用可能になる。
生成AIをめぐってはLLMなどの基盤モデルの開発競争が激化するとともに、提携も加速している。IBMによる取り組みは、こうしたモデルケースとして注目される。