大容量無線通信に強い味方、東北大がテラヘルツ波曲げる新技術
東北大学の千葉滉平大学院生と金森義明教授らは、第6世代通信(6G)に用いられるテラヘルツ波(テラは1兆)をシリコン製メタマテリアルで曲げる技術を開発した。シリコンはテラヘルツ波を吸収しないため電力効率が70%以上と高い。エッチングで製造でき、既存の製造装置を活用できる。建物や装置の裏などに指向性の高い大容量無線通信を送る用途に提案する。
単結晶シリコン基板に数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)から数百マイクロメートルの四角い穴を空ける。貫通孔の大きさを変えてパターンを作ると、入射したテラヘルツ波が共振して向きを変える。周波数が0・4テラヘルツの電波は46度。0・3テラ―0・5テラヘルツの電波は35―72度、進行方向を曲げられた。
シリコン基板の厚みは0・5ミリメートル。反射は起きるものの70%以上の電力効率で電波を透過できた。金属製のメタマテリアルはテラヘルツ波を吸収してしまう課題があった。
貫通孔のパターンはエッチング処理で形成でき、旧式の半導体微細加工装置で量産できる。6Gでは指向性の高い電波ビームで、狙った相手との高速大容量通信が検討されている。指向性が高いと障害物の裏に回り込まないため、電波を曲げる必要があった。
日刊工業新聞 2023年08月10日