営業損益まだら模様、キヤノン・リコー・セイコーエプソン…OA5社決算の中身
事務機器(OA)5社の2024年3月期(キヤノンは23年12月期)連結業績予想が9日出そろい、5社が増収を見込む。半導体を中心とする部品不足が解消傾向にあり、複合機の販売が堅調に推移する。ただ営業損益は増益が2社、減益が2社、黒字転換が1社と、まだら模様だ。ペーパーレスの潮流に伴って印刷需要は中長期的には緩やかな減少が見込まれる中、新事業の拡大やソリューションの強化などで多角化を加速することが求められる。
為替の円安などを背景に通期予想を上方修正したのは、キヤノンとセイコーエプソンの2社だった。キヤノンは個人消費や雇用環境も底堅く推移しているとし、下期以降もオフィス複合機の堅調が続くと見通す。23年4―6月期にはレーザープリンターが出荷の調整局面にあり減収となったが、下期の回復を見込む。プリンティング事業全体では新製品の販売強化などで、23年12月期に前期比5・6%の増収を目指す。
また監視カメラはセキュリティーに加え、製造や販売現場での生産性向上の用途での需要が強い。23年12月期にカメラ事業や医療事業は2ケタ増収を見通すなど、着実に新規領域が成長を続ける。
セイコーエプソンは24年3月期に増収営業減益を見込むが、為替の円安進行を踏まえて事業利益を除く各利益項目を上方修正した。ただ「インフレなどによる買い控えや投資抑制が想定以上に厳しい」(瀬木達明代表取締役専務執行役員)。
一方、リコーは24年3月期の業績予想を据え置いた。23年4―6月期は、複合機の製品供給制約からの回復や受注残の解消に加え、オフィスサービスが好調に推移した。中堅・中小企業向けにIT機器や業務ソフトウエアなどを提供する「スクラムシリーズ」の売上高は前年同期比55%増だった。
富士フイルムホールディングス(HD)は24年3月期連結業績予想を据え置いたが、ビジネスイノベーション事業はコスト改善が進み、営業利益を上方修正した。23年4―6月期の同事業は複合機の欧米向け輸出が減少したものの、ITサービスなどが伸びて増収営業増益となった。
コニカミノルタはヘルスケア事業を成長の柱に位置付けてきたが、収益は回復途上だ。24年3月期連結決算で当期損益の黒字転換を見込む。