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町工場の技術とアートを融合

川口まちこうば芸術祭2023
町工場の技術とアートを融合

デザイナーのこだわりやイメージを再現するため各社の加工技術を結集した(同芸術祭で展示したインテリア照明)

川口商工会議所、BASE TIMES kawaguchiなどは、3月8―12日に「川口まちこうば芸術祭2023」を川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉県川口市)で開いた。2022年に続き2回目の開催。栗原精機、かねよし、新光ステンレス研磨、フジテック、マエダの市内金属加工5社と、多様な分野で活躍するトップクリエーターや学生らが参加。5日間で延べ2448人が来場した。

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川口まちこうば芸術祭では、クリエーターや芸術系学生がデザインした時計や家具、照明器具、鏡など30―40点の作品や製品を展示した。参加した5社は切削や曲げ、研磨といった得意技術を持ち寄り、数ヶ月間かけて完成させた。

各社の取り組みは芸術祭以外にも波及している。イオンモール川口から依頼を受け、9月16―18日にワークショップ型の催事を開くことが決まった。10月下旬には「川口市市産品フェア」に出展する。これらの場では物販を行い芸術祭の継続を目指すが、リピーターの獲得や地域貢献を主な目的とする。

5日間で2448人が来場し、作品を鑑賞した

クリエーターと共同開発した製品は一部販売もしている。マエダと新光ステンレス研磨は時計の電子商取引(EC)サイト「空ノカケラ」を立ち上げ、すでに販売実績がある。このほか、イラストレーターの坂崎千春氏がデザインした時計は会期後に60個を販売し、今後の受注生産も決まった。

各社の社内外でも好影響が出ている。参加企業に行ったアンケートによると、社内の変化として「社員のモチベーション向上」や「社内の技術向上」、社外の変化には「認知度向上」を挙げた。他にも「普段できない加工に挑戦できた」、「社員間でコミュニケーションが生まれて活性化した」、「BツーC向けの引き合いが増えた」などの回答もあった。

普段は各社とも「下請け企業」として図面通りの加工をすることが多い。芸術祭ではスケッチ画などからクリエーターの意図をくみ取り、加工方法を社員自らが考え、提案することで技術力とモチベーションの向上につながっている。

芸術祭の開催を機に今後どのように地域貢献したいか尋ねると、5社から多様な視点の回答が出た。座長を務める栗原精機の栗原稔会長は「多くの市民の皆さんに見ていただき、企業間のつながりも作ることができた。この波を広げて産業と暮らしが両立する街づくりの一翼を担っていければ」と語った。

時計や家具、モビール、インテリア照明など30―40点を展示した

かねよしの吉田竜一社長は「川口市のアート都市としての魅力度アップに貢献したい」と回答。新光ステンレス研磨の堀山竜紀社長は「川口には優れた技術を持った町工場が多数ある。その技術を連携させてモノを完成させられる町にしたいというのが元々のコンセプト。この輪をもっと広げていきたい」とする。

若い世代にモノづくりへの興味を持ってもらうことに主眼を置く企業も。「特に地元の子どもたちに川口のモノづくりの技術を知ってほしい」(藤田一平フジテック専務)、「子どもや若い世代にモノづくりの素晴らしさを感じてほしい。オープンファクトリーを自社開催する企画を進めている」(前田聡悟マエダ副社長)とした。

24年は小貫金網製作所とひかり塗装が加わり、新たなクリエーターを迎えて開く予定。「これまでの回を上回るものにしたい」と栗原会長は意気込む。

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インタビュー・BASE TIMES kawaguchi座長 栗原稔氏/新たな素材加工・コラボに挑戦 

―「川口まちこうば芸術祭」の開催に至った経緯は。
 「新光ステンレス研磨の堀山社長と話す中で、造形作品を手がけるアーティストが加工を依頼する先が見つからないと悩んでいることを知った。川口にはさまざまな加工を手がける町工場が集積している。若い芸術家や学生の作品づくりを町工場の技術で手伝えないかと考えた」

「川口商工会議所に相談したところ、芸術祭のアイデアと同会議所主催のオープンファクトリーの参加企業をまとめてくれた。趣旨に賛同したマエダ、かねよし、フジテックを加えた5社が参画することになった。コロナ禍を経て22年に開催にこぎ着けた」

BASE TIMES kawaguchi座長 栗原 稔 氏

―5社の強みや特徴は。
 「金属加工業であることは共通しているが、製品のサイズや分野はばらばらだ。新光ステンレス研磨は表面処理が専門で、建築系の装飾物が多い。かねよしが加工した製品に新光ステンレス研磨が装飾をつけるなど、両社のつながりは深い。マエダも建築系金物に強く、ガラスやアクリル、看板や建築内装を手がける。フジテックは施設向けなど大型の曲げ加工に、当社は細かくて複雑形状の物を削り出すことに特化している」

―なじみのないアート作品を手がける上で苦労したことは。
 「アート作品には図面がない。ラフなスケッチ画からアーティストのニュアンスをくみ取るのに時間がかかった。ディレクターの石田和人氏があえてモノづくりに縁のないアーティストを選んだようだ。ただ、アーティストのこだわりはなるべく忠実に再現したかった。チャットを通じてアーティストと連絡を取り合い、佳境に入ると夜中も通知が鳴り続けている状態だった」

―本業に役立つ成果はありましたか。
 「当社は受託加工に加えてキャンプ用品や文具などの自社製品を手がけている。芸術祭で新たな加工技術に挑戦したことが自社製品にも生かされている。図面に従うのではなく、自分たちで考えて作ることが刺激になっている」

―今後の展開は。
 「24年の開催に向けて新たな参加企業を募り、小貫金網製作所とひかり塗装の参加が決まった。今後は今まで自分たちが扱ったことのない素材とのコラボレーションにも挑戦したい。新たなメンバーが入り、より技術が広がることを期待している」

「23年の開催前に、任意団体として『BASE TIMES kawaguchi』を設立した。芸術祭の実行委員会だけでなく、芸術祭で制作した製品の管理やブランド化、ワークショップ開催などの仕事を同団体で受ける。将来的に海外進出も目指したい」

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