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住友商事・伊藤忠…大手商社が中東で脱炭素推進、枯渇ガス田・太陽光活用

住友商事・伊藤忠…大手商社が中東で脱炭素推進、枯渇ガス田・太陽光活用

住友商事がUAEでCO2貯留を検討するSNOC保有のガス田

大手商社が中東でカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた取り組みを強化している。アラブ首長国連邦(UAE)では住友商事が現地企業と二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)事業で覚書(MOU)を締結し、伊藤忠商事は低炭素還元鉄の供給網構築を推進する。サウジアラビアでは丸紅が水素事業の検討を始めた。化石燃料の一大産地が、枯渇ガス田や太陽光発電などを活用したCN事業の重要拠点にシフトしている。(編集委員・田中明夫)

住友商事は子会社を通じて、UAEシャルジャ首長国の国営石油・ガス会社シャルジャ・ナショナル・オイル(SNOC)とCCSの検討のMOUを締結した。SNOCが保有し、数億トン超のCO2貯留能力がある枯渇ガス田を活用して、近隣首長国の発電所や工場から回収したCO2を貯留するプロジェクトを進める。

3年程度かけて事業化調査(FS)や基本設計(FEED)を実施し、2025-26年に最終投資決定、28年の操業開始を想定する。CO2の排出枠(クレジット)の創出や販売も検討する。

エミレーツ・スチールなどと覚書を結んだ伊藤忠商事の石井敬太社長(右から2人目)、JFEスチールの北野嘉久社長(同3人目)。立ち会う岸田文雄首相(左端)

今回のMOUは、7月中旬に中東を訪問した岸田文雄首相立ち会いのもとで交わされた。主要な中東産油国は脱炭素社会を見据えてエネルギー事業のグリーン化にかじを切っており、岸田首相は現地のフォーラムで「UAEを含む中東を、クリーンエネルギー・脱炭素のグローバルなハブとする」と述べ、協力関係を拡大する意向を示した。官民で中東のCN事業を推進する動きが強まっている。

伊藤忠もこのほど、UAE鉄鋼大手エミレーツ・スチールやJFEスチールと進めているCO2の回収・利用・貯留(CCUS)や太陽光発電を活用した低炭素還元鉄の供給網構築で、現地の港湾事業者も加えたMOUを締結した。

丸紅は3月にサウジアラビアの政府系ファンドと、水素の製造や国際市場への輸出の実現可能性の調査実施に合意した。

中東は金属や水素生産の電源に太陽光発電を使える余地が大きいほか、油田・ガス田の地下層を活用したCCSなどを事業化できる可能性がある。脱炭素化が進む中で収益源の確保を急ぐ中東産油国の企業と、ネットワークを活用して新事業創出を図る商社の協業が加速しそうだ。

日刊工業新聞 2023年07月28日

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