航空機産業で話題の「一貫生産」。検査員育成に課題

文=元川崎重工業取締役 榊達朗氏

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航空機産業の発展には課題もある(新人作業者の研修現場)
**大手の調達方法に変化
 YS―11以降半世紀ぶりとなる国産旅客機「MRJ」の開発や、世界的に旺盛な旅客機需要で、日本の民間航空機産業は活況を呈している。国も航空宇宙産業を成長分野の一つとして位置付け、その育成に積極的である。2015年には「航空産業ビジョン」が策定され、関係省庁が統一的な方針で航空産業の推進を図ろうとしている。近く、「航空基本法」の制定も検討されていると聞く。

 一方で国内のサプライチェーン(部品供給網)の発展には課題もある。従来、機体メーカーは機械加工、表面処理、熱処理、組み立てと、それぞれの工程を専門とする下請け企業に個々に発注していたが、最近は部品調達の効率化とリードタイム短縮の観点から複数の工程を一貫して行い、部品として購入する方式に切り替えつつある。

 こうした調達方式の変化に対応し、複数の中小企業が連携してクラスターを構築する取り組みが全国で活発化している。各社の得意な作業で連携することで、総合力として大きな付加価値を付けようとするものである。自治体もこの活動を積極的に支援している。

一貫生産クラスター 進まず


 しかし、今まで単一加工外注や特殊工程単独で成長してきた中小企業にとって、クラスターによる一貫生産体制の構築には数々の課題があり、それらが高い障壁となって簡単に進んでいないのが実情である。大きな課題の一つが「非破壊検査」の工程だ。部品の製造工程で傷などの欠陥を発見する作業であり、従来は機体メーカーに依存してきた部分である。

 航空機部品の多くには非破壊検査が要求される。具体的には磁気探傷、浸透探傷、超音波探傷などがあるが、いずれも欧米の基準に沿った認定を有する検査員が必要で、高度な技術が求められる。川下企業でさえ、その検査員育成に苦労している状況だ。

 検査員の資格認定を国内で容易に取得できるよう制度化しようとの動きが出ている。早急に制度化すべきだと考える。加えて、日本工業規格(JIS)による材料や部品が航空機に使用できるよう、国として今後の航空機産業発展のために動いていただきたい。

 航空宇宙産業は航空機メーカーを頂点とするピラミッド構造であり、「ティア1」「ティア2」といった企業や中堅・中小企業が航空機メーカーを支える。これは自動車産業と類似しているが、部品点数と種類の多さは比較にならず、MRJクラスの機体でも約100万点に及ぶ。

 これら膨大な部品が、決められた品質で、決められた時期に供給されないと、機体は完成しない。サプライチェーンの強化に向け、ボトルネックとなっている検査員の育成を急ぐべき時である。

【略歴】さかき・たつろう 56年(昭31)阪大機械工学科卒、同年川崎航空機工業(現川崎重工業)入社、87年岐阜工場長、91年取締役。97年民間航空機副社長。現在も各地の航空機産業クラスターに助言などを行う。兵庫県出身、83歳。

日刊工業新聞2016年2月29日付パーソン面記事「主張」より

COMMENT

産業が大きくなれば、当然サプライチェーンの高度化も進みます。中小企業も自社でやるべきことが増えます。これまでは「決まった会社」が「決まった部分」を手がけ、どこか牧歌的な雰囲気も持ち合わせていた国内航空機産業のサプライチェーンですが、今後は経験のないことにもチャレンジする姿勢が必要になってきます。

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