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トヨタ未来創生センターが開発した「机の下でこげるペダル」が面白い

トヨタ自動車未来創生センター青木英祐主幹らは、机の下でこげるペダルを開発した。人間の歩行に近い楕円(だえん)軌道で足を回転させる。座面が動揺するイスと組み合わせて体幹を揺らすことで、腹の周りの筋肉を活動させる。運動習慣を生活に組み込めるため、健康につながると期待される。自動車のシート設計に知見を生かす。

固定両スライダクランク機構で楕円運動を生成した。十字の溝の間を二つのスライダーが交互に行き来してペダルが楕円上を回る。楕円の長径は46センチメートルで短径は22センチメートル。装置の大きさは43センチ×43センチ×14センチメートルで、机の下に収まる。足を踏み込む際に力が要るように設計した。歩幅は調整できる。

座面が3軸の回転方向に動く運動イスも開発した。人間の身体では一つの動きが隣り合う関節に伝わる運動連鎖が起きる。足こぎペダルと揺動イスを組み合わせると、足の動きで体幹が揺さぶられ、腹の周りの筋肉を使うことになる。筋電位を計ると、市販の足こぎペダルに比べて体幹の筋負荷が大きくなった。

デスクワーカーが机に向かいながら歩行機能をトレーニングできる。ペダルの回転運動で発電しており、モバイルバッテリーなどを充電できる。

人間は長時間同じ姿勢でいると特定の筋肉に負荷が集中して疲労する。ゆっくりと座面が動いたり、身体の運動を促したりすることで筋負荷を分散できる。

一般にイスは身体が動かないよう柔らかく固定するものが座り心地のよいイスと考えられている。長時間座る場合は適度に運動できると身体負荷を抑えられる可能性がある。こうした人間工学の知見は自動車のシート設計に生かせる。


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日刊工業新聞 2023年07月13日

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