高速炉実証炉の開発事業「中核企業」、経産省が三菱重工を選定した理由
経済産業省は、高速炉の実証炉開発事業で設計や製造、建設を担う「中核企業」に三菱重工業を選定した。子会社の三菱FBRシステムズ(東京都渋谷区)が提案した「ナトリウム冷却型高速炉」を、設計の初期段階にあたる「概念設計」の対象に選んだ。2040年代の運転開始を見据え体制を整える。
中核企業の選定理由として、高速炉開発や国際協力に参画してきた実績があること、国内サプライチェーン(供給網)の現状や課題を把握していることを挙げた。総合的なエンジニアリング能力を有し、原子力事業の設計から建設・試運転までをグループ各社で分担することで、プロジェクトを遂行する力があるともした。
三菱FBRシステムズが提案したのは出力65万キロワットの中型炉。概念設計の選定理由として、大型炉や小型炉にも展開できる設計で、大型炉の場合は軽水炉に競合できる建設コストを見込めることを挙げた。研究開発課題として耐震性向上やシビアアクシデント対策、コスト低減などを挙げ概念設計終了時の達成目標を具体化していることも評価した。
高速炉技術評価委員会が選定し、12日開いた高速炉開発会議の作業部会で公表した。委員長の山口彰原子力安全研究協会理事は「安全性、市場性、国際協力による開発の効率性などの観点からしっかり提案されている」とコメントした。
政府が示したロードマップでは、24年度から概念設計を進め、28年ころに基本設計や許認可手続きへの移行を判断する。30年代から製作、建設し、40年代の運転開始を見込む。
高速炉の実証炉開発事業では23年度からの3年間で計460億円の予算を充てている。
日刊工業新聞 2023年07月13日