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《石油大再編#01》JX&東燃 どこの製油所が廃止になるの?

2社トップインタビュー
《石油大再編#01》JX&東燃 どこの製油所が廃止になるの?

東燃ゼネラル石油の武藤社長(左)とJXエネルギーの杉森社長

JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油が目指す2017年4月の経営統合について、JXHD傘下のJXエネルギーを率いる杉森務社長と、東燃ゼネラル石油の武藤潤社長に聞いた。

JXエネルギー杉森務社長「需要に見合う生産体制」


 ―東燃ゼネラル石油との統合の狙いを改めてお聞かせ下さい。
 「最大の狙いは需要に見合う生産体制構築だ。石油の国内需要は確実に減るが、単純に減産すれば、生産効率も落ちかねない。製油所の廃止も大変な作業だ。1社でやれることには限界があり、2社の方が解決しやすい。近接する両社の製油所のどちらか一方を、廃止する可能性もある」

 「原油安を受け、原油処理量のきめ細かい調節などの需給適正化策を独自に進めてきた。サプライチェーン全体の効率化にも取り組んでいる。例えば調達価格が安い超重質原油を薄め、うまく活用するなどの工夫だ。これらにより2016年3月期は200億円の収支改善目標を達成できそうだ。統合後は規模の利益も生かし、原油価格の下落局面でも収益を落とさないための改革を加速したい」

 ―海外市場の開拓はどう進めますか。
 「東南アジアで原油精製から石油製品の販売までを一貫して行うのが夢だ。手始めにベトナムの製油所建設事業や、インドネシアの製油所改修事業への参画を目指し、現地の事業主体と交渉を進めている。海外での本格的な精製や、給油所(SS)の展開を含む販売は経験がなく、いずれは両国でやりたい」

 ―電力事業にはどう取り組みますか。
 「家庭向けの小売り事業を4月に始め、3年程度で50万件の契約獲得を狙う。一足先に販売を始めた産業用や業務用電力と、需要のピークタイムが異なるため生産性が高まる。電力の卸事業にも力を入れたいが、コスト競争力のある電源が欠かせない。燃料の天然ガスや石炭までさかのぼり、競争力のある調達ルート確立を急ぐ」

東燃ゼネラル石油・武藤潤社長「投資に必要な収益確保


 ―JXHDとの統合の狙いは何ですか。
 「原油価格がどちらに向かおうが、石油は今後も1次エネルギーの大宗を占めるだろう。その重要性を踏まえて、安全性や信頼性にかかわる投資を続けなければならない。ただエネルギーの供給構造が変わらなくても、収益は年度でぶれる可能性がある。投資に必要な収益をいかに確保するか。一つの帰結がJXHDとの統合だ」

 「国内需要が減って製油所の稼働率が下がれば、原油処理コストが増える。これは社会全体の負担になる。一方にはJXHDとの統合で寡占状態になり、公正な取引が行われなくなると心配する声もある」

 「独占・寡占の利益をむさぼることは許されない。独占・寡占状態で値段が上がるのではないかという不安と(内需縮小に伴う)コスト負担増に対する不安の間で最適な形をつくり、成果を消費者や社会に還元したい」

 ―内需縮小が進む中で勝ち残るための条件は何ですか。
 「変化への柔軟な対応が必要だ。米国の輸出解禁などで原油の流通経路が様変わりするかもしれない。何があっても対応できるように、原油調達全体の5割という高い比率でスポット買いを行っている。製油所も状況に応じ、最も高付加価値の油種をつくれるようにしてきた。サプライチェーンの柔軟性に磨きをかけるための投資に、今後も力点を置く」

 ―電力事業にはどう取り組みますか。
 「静岡市清水区や千葉県市原市に建設する火力発電所の運転が始まれば、既存の電源と合わせて相当な発電規模になる。家庭向けに加え、大口需要家向けの電力販売にも力を入れ、電力事業を収益の柱の一つにしたい」

【記者の目・環境変化に機敏な対応重要】
 統合の焦点となる製油所の統廃合について東燃ゼネラル石油の武藤社長は、そもそも論として「効率性の点で製油所運営のあるべき姿を考える必要がある」と指摘する。米国の輸出解禁やイランの輸出拡大で原油調達の選択肢が広がる一方、需要側でも新興国の成長に伴ってニーズが多様化する可能性がある。こうした環境変化に機敏に対応できる供給体制をどう確立するかが、石油元売り業界の重要課題になりそうだ。
(聞き手=宇田川智大)
日刊工業新聞2016年2月25日エネルギー面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
国内需要が先細る中、製油所再編が統合の統合の焦点。「総論」を「各論」にどう落とし込んでいくか、17年4月の統合に向け、詰めの作業が続いているのだろう。

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