独自技術にこだわる農機メーカー、シェア伸ばす新事業「壁面緑化」の効果
みのる産業(岡山県赤磐市、生本尚久社長)は、独自技術へのこだわりが強い農業機械メーカーとして知られる。新事業として力を入れてきたのが建物の壁面緑化事業だ。
ベースとなる技術が固化培土「エクセルソイル」。2004年にクラレと共同開発し、07年に事業部を設置した。これは、ピートモスと呼ぶ泥炭土に土壌改良材とポリエステル短繊維を混ぜて成形し、100度Cの蒸気で加熱して製造する。
溶けて網目状になった繊維が土壌を保持し、容器なしでも形状を保つ。保水性・透水性に優れ、風雨で土が飛んだり流れたりせず最低限の資材で壁面に固定できる、高温処理で病原菌が死滅する、などの利点が壁面緑化の土に適している。
また容器がなく土が露出しているため水分が蒸発し、気化熱で温度を下げる。夏の実験環境では、緑化していない壁に比べ表面温度が最大11度C下がった。都市のヒートアイランド現象の緩和に役立つと期待されている。
560ミリ四方×厚さ5ミリメートルの培土をユニット化し、自社農場で植物を植え付け、育てた上で現場で取り付ける。現場で植える方式に比べ工期が短く、コストを抑えられる。年に2回ずつの剪定(せんてい)と巡回で緑を保ち続けられるが、これも他方式より安上がり。コロナ禍以前は年間5000平方メートル前後を出荷しており、市場シェアは高いようだ。
建築物の緑化規制で壁面緑化を緑化面積に算入できる自治体が増えてきたのも追い風。「14年に東京に営業所を設けた時は最後発で、メンテを怠って枯れた緑化ユニットがたくさんあった。設計事務所への売り込みを強化し、シェアを伸ばしてきた」(有川直樹エクセルソイル事業部長)。
岡山県内の優れた取り組みを表彰する「おかやまSDGsアワード2022」では、次席の「優良な取り組み」に選定された。「緑には心を和ませる効果がある。ヒートアイランドだけでなく、犯罪の抑制にもつながってほしい」(同)。