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日本の地熱が「正念場」…30年目標150万kW達成厳しく

日本の地熱が「正念場」…30年目標150万kW達成厳しく

地熱発電のハードルは高い

日本の地熱発電が伸長していない。この7―8年間でも全体の規模は増えず、数万キロワットの新規案件は見当たらない。政府が2030年の発電目標とする150万キロワットの達成が厳しくなっている。1万キロワット級中心の新規プロジェクトが各地に立ち上がるのか。この数年が正念場だ。(いわき・駒橋徐)

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の導入以降、1000キロワット以上は新規立地が少なく、全体の発電量は00年以降でも数万キロワット増にとどまる。

30年の目標の150万キロワットを達成するには、数万キロワット級の新規案件が毎年1件出ないと厳しい。地熱発電は地下地熱層調査にコストがかかり、地元との調整など再生エネの中でハードルが最も高い。系統接続問題や国立公園内の作業など地熱開発への規制も絡む。

このためエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は地下資源開発固有のリスク低減を狙いに、地熱資源調査を行う事業者に対する助成金交付事業などの各種支援策を展開する。地熱資源は掘削調査が必要で、井戸は1本5億―6億円程度かかる。ここ数年の助成額は増加傾向だ。

21―22年度に国立公園を含む全国30カ所の自然公園内の地熱ポテンシャル調査も実施した。今まで手つかずの自然公園内も地元の合意で調査するほか、データを事業者に公開し、案件の組成につなげていく。

葛根田地熱発電所(岩手県雫石町)のように地熱蒸気減衰で1号機が廃止となった例もあるが、JOGMECは柳津西山地熱発電所(福島県柳津町)での蒸気減衰回復策として人工涵養(かんよう)技術の実証を推進。河川水を涵養井に注水し、生産井から生産される蒸気や熱水の状況をモニタリングする。酸性度の低下や蒸気減衰の抑止など一定の効果が認められてきたことから、他の地熱発電の減衰対策に適用するためのガイドラインをまとめる。

再生エネの売電価格に関しては、22年4月から従来のFIT制度から市場価格連動型制度(FIP)に変わった。ただ地熱発電の売電価格はFITの時と変わらず、1万5000キロワット未満で1キロワット時当たり40円、1万5000キロワット以上で同26円。これらの価格は24年度まで継続する。

日本は世界3位の地熱資源量があるが、開発が難しいエリアが多い。純国産エネルギー実現に向け、日本地熱協会は地熱法の制定を政府に要望するとともに大型地熱発電の開発を求めている。

日刊工業新聞 2023年07月06日

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