「ワイモバ」「UQ」に対抗するドコモ、そして楽天は?…新料金プランでシェアは変わるか
大手携帯通信事業者が相次いで新料金プランを投入している。NTTドコモは1日、データ利用量が少ない顧客向けのプランの提供を開始。楽天モバイルは6月に、KDDIから回線を借りる「ローミング」利用によるデータ利用量の上限をなくした。携帯通信サービスのシェアは、首位のドコモをKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが追う構図が続いている。新プランの登場でシェアに変化が生じるのか注目される。(張谷京子)
ドコモ、「小容量特化」で転出に歯止め
「『イルモ』は『UQモバイル』や『ワイモバイル』への対抗策だ」―。ドコモの携帯通信サービスの新プランであるイルモ投入の狙いについて、NTTの幹部はこう明かす。
ドコモは小容量帯に特化した料金プランがなく、そうしたプランを求める利用者のポートアウト(転出)が目立っていた。また、KDDIが展開するUQモバイルやソフトバンクが手がけるワイモバイルといった携帯通信サービスのブランドに匹敵するような料金プランとして「ahamo(アハモ)」を展開しているものの、オンライン専用で申し込む仕組みのため、シニア層など店舗でのサポートを希望する顧客を取り込めていなかった。
こうした事情もあってか、実際にドコモは携帯通信サービス契約数のシェアを落としてきた。総務省がまとめた移動系通信の契約数における事業者別シェアによると、同社は23年3月期に21年3月期比1・2ポイント減の35・7%だった。首位のドコモは常に追われる立場であり、通信事業者の新規参入に伴ってシェアが下落することはやむを得ない面もあるが、新プランの効果でシェアの下落を今後最小限にとどめられるかが問われる。
一方、過去2年間でシェアをじわじわと伸ばしてきたのが、移動体通信事業者(MNO)最後発の楽天モバイルだ。総務省の統計では、同社のシェアは23年3月期に21年3月期比0・7ポイント増の2・2%だった。月間データ量1ギガバイト(ギガは10億)以下は0円としてきた枠組みを取りやめると22年5月に発表したことで、契約者が他社に流出したものの、シェアは横ばいを維持している。
そんな中、楽天モバイルが23年6月に投入したのが「Rakuten最強プラン」だ。従来の料金体系は維持しつつ、ローミング利用によるデータ利用量の上限をなくした。これまで同社は、他社と比べて“つながりにくい”という指摘を受けていた。親会社の楽天グループは、基地局建設に伴う設備投資がかさんで巨額赤字を計上する中、新プランで契約者数の増加を促進し、楽天モバイルの黒字転換を狙ったとみられる。
ただ、業界関係者からは今回の新プランについて「楽天モバイルは、KDDIと同様のネットワーク品質が提供できるようになるわけではない」と疑問を呈する声もある。楽天モバイルは新プランでシェア拡大につなげられるかが試される。