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ホンダが八千代工業を売却…サプライヤーに再編の波

ホンダが八千代工業を売却…サプライヤーに再編の波

今後ホンダが電動車に事業を振り向ければ、ガソリンエンジン車部品である燃料タンクの需要は減少が見込まれる(八千代工業)

ホンダは燃料タンクやサンルーフなどを手がける連結子会社の八千代工業を、インドのサンバルダナ・マザーサン・グループに売却する。自動車業界で進む電動化の潮流を見据え、八千代工は4輪車用の内外装樹脂部品をグローバルに展開するマザーサンの傘下で持続的な成長を目指す。2040年に新車販売のすべてを電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)とするホンダの戦略に伴い、サプライヤーにも再編の波が押し寄せている。

マザーサン・グループは300超の製造拠点を持ち、グローバルに自動車部品事業を展開している。ホンダはマザーサンによる買収が中国や米国などでの競争法の許可を得られることを前提として10月をめどに八千代工へのTOB(株式公開買い付け)を実施する予定。買収額は約165億円となる見通し。

八千代工をTOBで完全子会社とした後、株式の81%をオランダにあるマザーサンのグループ会社に約190億円で売却し、ホンダは19%を保有する。八千代工もホンダによるTOBとマザーサン・グループへの株式売却に賛同する意見を表明している。

ホンダは八千代工の株式を議決権ベースで50・41%保有している。八千代工はホンダの完全子会社となれば上場廃止になる。ホンダは完全子会社後、八千代工の連結子会社で2輪車部品を手がける合志技研工業について八千代工が保有する株式をすべて買い取り、合志技研工業の株式を議決権ベースで95%保有する予定だ。

八千代工は燃料タンクが主力で、23年3月期の連結売上高1882億円のうち約9割がホンダ向け。今後ホンダが電動車に事業を振り向ければ、ガソリンエンジン車部品である燃料タンクの需要は減少が見込まれる。

またホンダは車の電動化に伴ってバッテリー搭載量が増加し、車両全体のレイアウト維持のために軽量・薄型化が必要になる。そのためデザイン上の制約などから、八千代工が手がけるサンルーフについても採用率が低下するとみている。

八千代工は事業環境の変化に対応するため、ホンダ以外にも主力製品の販路を広げ、電動車でも必要となる樹脂製品事業を持続的に拡大していく必要がある。ホンダと八千代工はこうした将来を見据え、「八千代工の強みである樹脂部品を、マザーサン・グループの販路を使って拡大していける」(ホンダ)と判断。グローバルに樹脂部品事業を展開するマザーサンの経営資源を活用しながら電動化時代を勝ち残る戦略を選んだ。


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日刊工業新聞 2023年07月06日

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