自動運転・電動化の実現へ次世代車と融合、自動車ランプメーカーが提案する最新技術
国内自動車用ランプメーカーが次世代自動車向けの技術開発を加速している。自動運転社会や電動化の実現に向け、ランプにも次世代車両と融合する高機能なシステムが求められる。先進運転支援システム(ADAS)・自動運転の安全性に貢献する技術や、デザインの自由度を高めたライティングなど、ランプ大手3社は技術の開発や実用化に向けた提案を急ぐ。(増田晴香)
スタンレー電気、レーザー光制御自在
スタンレー電気はレーザー光源を用いたヘッドランプを実現した。青色レーザー光を微小電気機械システム(MEMS)ミラーで反射し、ミラーの角度を高速で上下左右に動かすことで、レーザー光線を面の光にする。ミラーの角度制御によって照射範囲や位置を緻密に変えたり、局所的に集め、明るい光を遠くまで照らしたりすることが可能。同技術では複数の光源を使う必要がなく、一つのレーザー光源をあらゆる交通シーンに合わせて自在に制御できるため、光を効率的に使える。
2021年に三菱電機と業務提携契約を締結。三菱電機のドライバーモニタリングシステム(DMS)とスタンレー電気のヘッドランプを組み合わせたシステムの提供を目指す。
DMSはドライバーの顔や目の動きをセンシングし、居眠りや脇見運転を検知するシステム。両社の技術を連動することで、例えばドライバーが路肩の歩行者に気付かない場合、警告する前にランプで歩行者を照らして瞬時に気付けるようにする。同システムは26年以降の採用を狙い、「どういった条件で作動させるか」など自動車メーカーと協議している。
小糸製作所、「LiDAR」で自動運転実現へ
自動運転の実現に向けては、車載用高性能センサー「LiDAR(ライダー)」の開発に各社しのぎを削っている。小糸製作所は米ベンチャーのセプトンとの協業で中距離用、短・長距離用ライダーを開発している。セプトンが持つ特許技術により精度のほか耐久性やコストなどにも強みを持つ。前方200メートル程度を測定する中距離用ライダーは23年度中に量産を開始する予定だ。
ライダーは自動車向け以外での活用も想定する。施設内などで周囲の監視が可能な「移動体検知システム」も開発。高精度で広範囲な検知能力を生かし、人など移動体の位置情報を、プライバシーを侵害せず検知できる。商業施設や空港などに提案している。
市光工業、充電状況など情報表示市光工業はマイクロ発光ダイオード(LED)などを使用し、充電状況などさまざまな情報を表示できるフロントフェースのコンセプトモデルを開発した。
電動化により、ラジエーターグリルに備えられたエンジン冷却のための吸気機能の必要性が低くなる。
グリルとランプの意匠面での垣根がなくなりつつあり、従来のグリルバンパーの位置にもディスプレーを設置。
意匠性の差別化やドライバーの視界の改善のほか、曲がる方向や自動運転モードのオン・オフなど道路利用者とのコミュニケーションを促進し、安全性の向上にも寄与する。
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