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実質上の値上げか…ドコモ料金プラン刷新に隠されているかもしれない事情

実質上の値上げか…ドコモ料金プラン刷新に隠されているかもしれない事情

新料金プランをアピールする山本営業戦略部長(中央=20日、都内)

NTTドコモが携帯通信サービスのデータ利用量が少ない利用者の取り込みに向け、料金プランを刷新する。7月1日に提供を始める「irumo(イルモ)」は、月間データ利用量0・5ギガバイト(ギガは10億)の場合は月額550円(消費税込み)。スマホ利用者のうち約半数が月間3ギガバイト未満にとどまると言われている一方、ドコモはこれまで小容量帯の料金プランの展開が手薄だった。プラン刷新で、他社への転出抑制や新規顧客の獲得につなげられるかが問われる。(張谷京子)

ドコモはイルモに加え、小容量から無制限のデータ利用まで多様なニーズに応える「eximo(エクシモ)」の提供も始める。今後は以前から展開している、オンライン申し込み専用の「ahamo(アハモ)」、イルモ、エクシモの三つを同社の料金プランのブランドとして展開していく構えだ。

目玉となるのは、データ利用量が少なく、低廉な料金を求める利用者向けのイルモだ。山本明宏営業戦略部長は「ドコモで安いプランを出してほしいという声がたくさんあった」と、イルモ投入の背景を語る。

従来ドコモは小容量帯のプランを、仮想移動体通信事業者(MVNO)と提携して提供する携帯通信サービス「エコノミーMVNO」を通じてカバーしてきた。ただドコモのブランドとしては、小容量帯に特化した料金プランはなく、そうしたプランを求める利用者のポートアウト(転出)が目立っていた。

イルモの投入に合わせ、これまでエコノミーMVNOとして提供してきた、ドコモ傘下のNTTレゾナント(東京都千代田区)が手がける「OCNモバイルONE」のウェブでの新規申し込み受け付けを26日に終了する。ドコモは7月1日付でレゾナントを吸収合併する予定。山本部長はこの合併はあくまで「中期戦略実現に向けた一環」としているものの、組織再編に伴って料金プランを整理した印象はある。

KDDIが携帯通信サービスのサブブランド「UQモバイル」の料金プランを6月に改定するなど、昨今はドコモ以外の携帯通信大手も料金プランの刷新に動いている。各社で表向きの狙いは異なるものの、物価高などを背景にした“実質上の値上げ”である可能性も否定できない。

例えばドコモのイルモでは、OCNモバイルONEにあった月間1ギガバイトで770円(消費税込み)のプランがなくなった。3ギガバイトのプランも、OCNモバイルONEは990円(同)だったところ、イルモでは2167円(同)になる。

電気料金の高騰や人件費の値上がりといった影響は産業界全体に広がっており、携帯通信業界も例外ではない。ただ、同業界では近年、政府の政策によって通信料値下げを余儀なくされてきた経緯もあって、表立って値上げをしにくいとも言える。今回のドコモなどの料金プラン刷新の動きには、そんな事情が隠されているかもしれない。

日刊工業新聞 2023年06月22日

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