コンテンツ軸に好循環…ソニーGの強さの源
テレビゲームのチャンピオンが本物のカーレースでもチャンピオンになった―。そんな夢のような実話がある。英国出身のヤン・マーデンボロー氏は、ソニー(現ソニーグループ)のゲーム会社が提供する大人気のドライビングゲームシリーズ「グランツーリスモ」に夢中だった。
ある日、レーシングドライバー養成プログラムの選考大会でグランツーリスモをプレーなどして優勝すると、プロレーサーになる機会が得られると知って応募。9万人の参加者と競い合い、見事優勝した。それが2011年のことで、翌12年にはレーサーとしてプロデビュー。その後もフォーミュラカーレースに参戦するなどキャリアを積み、何度か優勝も果たしている。
そんなドラマチックな人生をハリウッドが見逃すはずはなく、マーデンボロー氏の実話を基にした映画が8月に全米、9月には日本で公開される。ところで製作を手がけたのはコロンビア・ピクチャーズで、やはりソニーGだ。さらに制作には映像制作カメラなどグループの最新技術をふんだんに取り入れた。
コンテンツを軸に、ゲームや映画、音楽など多方面に展開し、収益を上げる―。23年3月期連結売上高で初の10兆円の大台に乗せるなど、今のソニーGの強さを物語る実例の一つではないだろうか。
十時裕樹ソニーG社長は5月の経営方針説明会で「コンテンツ知的財産権(IP)がプライオリティー(優先順位)のナンバーワン」と述べ、あらためてコンテンツ投資の重要性を説く。
ソニーGでは現在、自社保有のゲームIPの実写化プロジェクトが10以上控えているという。コンテンツを軸にした好循環は当面揺るぎないものとなりそうだ。
日刊工業新聞 2023年06月19日