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欧州で空質空調事業を強化するパナソニックならではの戦略

欧州で空質空調事業を強化するパナソニックならではの戦略

化石燃料を用いた暖房に比べてCO2排出量を抑えられるA2Wは欧州で需要が高まっている

パナソニックホールディングス(HD)の最大の事業会社であるパナソニックは、欧州で需要拡大が続くヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)事業を強化する。チェコ工場の増強を加速するため、2024年度までに450億円の追加投資を決めた。A2Wを含む空質空調事業は30年度に向けて収益の大幅な向上を期待する「成長リーダー」の一つ。欧州のA2Wは競争の激しい市場だが、総合家電メーカーならではの戦略で挑む。(編集委員・安藤光恵)

品田社長はA2W事業の競争優位性に自信を示す

パナソニックは七つの重点事業を定めており、空質空調と海外電材の成長リーダーと、水素などのエネルギーソリューションや二酸化炭素(CO2)冷凍機の「リーダー候補」を合わせて成長事業と位置付ける。中でも空質空調は「中長期的に最も高い成長と収益を見込む」(品田正弘社長)事業であり、パナソニックHDの中でも重要な存在となっている。

特に期待をかけているのが、追加投資を決めた欧州のA2Wだ。A2Wは大気中の熱を集めて作り出した温水を循環させる暖房システムで、化石燃料を用いた暖房に比べてCO2排出量を抑えられる。環境対策を重視する欧州の需要で期待が高まる市場だが、ダイキン工業三菱電機などの他メーカーがしのぎを削る激戦区でもある。

品田社長は自社の優位性について「環境負荷の少ない冷媒や、室内機で冷媒を使わない水循環など、欧州の主流になる進歩的な技術を持っている」と語る。国内家電などの安定した収益で得た資金を成長分野の投資に回しやすい体制も強みだ。

エネルギー管理のニーズを踏まえ、空調単体ではなく照明や冷蔵設備など、IoT(モノのインターネット)で総合的な管理を提供する構想もある。品田社長は「強い者同士が集まらないと、究極の強いモノが生まれない。(社内)分社それぞれが力をつけることが重要」とし、エレクトリックワークス社や空質空調社といった分社間の相乗効果を追求する。

M&A(合併・買収)も視野に入れる。「欧州は屋内のデザインにも気を配っており、生活の中で心地よい存在として定着するには欠けているピースはまだある」(同)。

分社間の連携とM&Aの構想で共通するのは、規模を大きくするだけでなく、独自の付加価値の提供を意識している点だ。多角的な事業から得た応用力が問われる。


【関連技術】 パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり
日刊工業新聞 2023年06月19日

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