「洋上風力」で大型買収2件、JERAが鮮明にする世界展開への姿
洋上風力発電をめぐりわずか3カ月の間に2件の大型買収を決めたJERA。これら統合効果を生かした事業戦略が見えてきた。台湾中心だった従来戦略を転換し、市場が先行する欧州の知見を取り込みながら世界展開を目指す姿を鮮明にする。
「洋上風力を国内外でさらに展開するには、(案件開拓から運転にたけた)プロ集団が必要。それは圧倒的に欧州に集中する」。可児行夫会長グローバル最高経営責任者(CEO)はこう明かす。
人材やノウハウを獲得し、グローバルな事業拡大を目指す方策の一つが、2023年3月に買収したベルギーの洋上風力大手、パークウィンド。同社は欧州の洋上風力発電事業で10年以上にわたり開発から運転に関わってきた実績を持つ。JERAは買収によってこれらの知見をアジアでの事業や今後の案件開発に生かす狙いで、「JARAの世界戦略で不可欠なピース」(可児氏)と位置付ける。
国内では5月にグリーンパワーインベストメント(GPI)をNTTグループと共同で買収することを発表。国内風力などを主導するGPIの実績や経験とJERAの海外での知見を組み合わせ、さらなる案件発掘につなげる。
JERAは25年までに国内外で500万キロワットの再生可能エネルギーを開発する目標を打ち出す。一連の買収によって「完全に射程に入った」(可児氏)と言い切る。同社の大型案件は台湾に立地が集中し、リスク分散の必要性も指摘されてきた。その台湾で進めてきた洋上風力プロジェクト「フォルモサ3」については収益性などを踏まえ、この6月までに事業権益の売却を完了。先行する「フォルモサ1」と、この1月に完工した「フォルモサ2」に集中することになる。
課題は一連の大型買収による相乗効果をいかに発揮するか。組織運営体制については、英国法人を通じてパークウィンドを傘下に置くとともに、国内外で展開する再エネ事業もここに集約。日本や台湾、米国など各地域のチームが一体となって事業運営や案件開発にあたる姿を描く。一方で、経験や文化的な背景も異なる人材をどう束ね効率的な事業運営につなげていくかは未知数。可児会長グローバルCEOも「企業風土の融合も含めやるべきことは多い」との認識を示す。
再生可能エネの開発は次世代燃料の供給に不可欠なだけに、一連の取り組みはさまざまな企業の脱炭素戦略とも無縁ではない。