デジカメ「新興国商機」を逃すな。ミラーレスでユーザー広げる

各社、今後数年間は年2ケタ成長目指す

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カシオは中国で絶大なブランド力を誇る自撮りカメラ「TR」シリーズの展開を拡大
 東南アジアを中心とした新興国市場で、デジタルカメラの販売が好調だ。特に勢いを増しているのが、ミラーレスカメラを中心に展開する中堅メーカーだ。

ソニー、インドのウエディング市場に狙い


 ソニーは、インドでは結婚式に多額の費用をかけることに着目。ウエディング市場をターゲットに据え、プロや愛好家層向けの製品やサービスを拡充している。売れているのは40万円クラスの高級機。デジタルイメージング事業本部の田中健二ILCビジネスユニット長は「小型・高精細・超高感度を武器に、まずは影響力がありユーザーのトップ層であるプロを攻略し、徐々にユーザー層を広げていきたい」と意気込む。

 その戦略に合わせ、3月には10万円を切る価格帯の新製品「α68」を投入する計画だ。赤色の鮮やかな発色を好むインド人向けに、赤系統の色をより深く、鮮やかに撮影できる「ビビッドモード」を搭載。プロに続き愛好家層の開拓を進める。「直近では約2倍伸びている」(田中ビジネスユニット長)というインドでの売り上げを、さらに伸ばす構えだ。

 富士フイルムはタイやマレーシア、インドネシアなどで販売を拡大。顧客との親密度をより高めようと、東南アジアを中心にショールームを積極的に新設している。高橋通常務は「ユーザーとの接点を増やすと同時に、プリント技術を差別化ポイントとしてカメラに対する潜在ニーズを喚起する」と狙いを説明する。ソニーも富士フイルムも新興国の売り上げを、今後数年間は年率2ケタで伸ばせるとみる。

パナは「4K」、カシオは「自撮り」


 またパナソニックは、欧米日市場を中心に中・高級機を重視した戦略を進める一方、富裕層が増える中国、シンガポール、タイなどで高付加価値なミラーレスカメラ販売を伸ばしている。大手カメラ量販店で取り扱いを増やしてもらうなど、先進国同様の地道な営業活動の効果が表れている。

 家電で培った知見を生かし、毎秒30コマ撮影の4K動画から静止画を切り出す新スタイルを提案。杉田卓也AVCネットワークス社副社長は「4Kに留まらない。画期的なカメラを仕込み中で、ミラーレスを進化させ、パナソニックが先頭に立って写真の世界を変える」と意気込む。

 各社は小型・軽量というミラーレスの従来の特徴に加え、高画質・高感度といった性能を向上。比較的価値観がフラットな新しい成長市場で「高級機イコール一眼レフ」という従来の価値観を覆し、その勢いを欧米などの先進国市場へつなげるのが真の狙いだ。富士フイルムの高橋常務は「東南アジアでの勢いを足がかりに、より大きな市場である日米欧の攻略につなげたい」と力を込める。

 中国で築いた地位を足がかりに、他のアジア新興国への進出も果たそうともくろむのは、カシオ計算機だ。自分撮りカメラ「TR」シリーズは、中国では圧倒的なブランド力を誇り、10万円を超える製品も好調だ。重岡正之QV戦略部長は「TRが受け入れられる市場を見極め、女性がキレイに撮れる画質調整機能などを強みに販売地域を広げたい」とする。

一眼レフが中心の欧米市場でどこまで切り込めるか


 カメラ映像機器工業会が1日発表した予測によれば、16年の世界出荷台数はコンパクトデジカメが15年比16・6%減の1860万台、レンズ交換式カメラが同5・3%減の1240万台の見込み。下落幅は小さくなっているものの、いつ縮小傾向に歯止めがかかるかは不透明だ。

 最も大きく影響しているのが、スマートフォンに置き換わっているコンパクトデジタルカメラ。一方、レンズ交換式カメラでは一眼レフカメラの出荷台数が年々減少しているのに対し、ミラーレスカメラは唯一その数を増やしつつある。一眼レフが中心の欧米市場で、どこまでその牙城を崩せるかがさらなる市場拡大の焦点となる。

 シェア1位のキヤノン、2位のニコンも、ミラーレス製品を強化・拡充する方針を打ち出している。市場を覆すような抜本的な革新がない限り、カメラ市場全体の再成長は難しい。今後は限られた市場の中でシェア争いがさらに激化しそうだ。
(文=政年佐貴恵)
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日刊工業新聞2016年2月25日「深層断面」から抜粋

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

キヤノン、ニコンの上位2社も攻勢を強める。キヤノンはインドの直営店を現在の176店から16年までに240店舗に増やす。ニコンは高級一眼レフで中国の地方都市の開拓中で、今後は中東などにもリソースをかけるという。再編。撤退が起こると言われながらななかな起きないデジカメ業界。各社、それぞれのポジショニングが明確になりつつある。

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