トラック・バス…大型車に「水素」高速充填、フジキンがバルブ新開発
フジキン(大阪市北区、田中久士社長)は、燃料電池大型トラックなど大型車両に水素を高速充填するためのバルブ(写真)を開発した。大型車両では燃料タンクが大容量となるため、従来の水素ステーションでは充填に長時間要することが課題だった。新型バルブでは充填時間を半分以下にできるのが特徴。トラックやバス、建設機械、農業機械など大型車両を扱う水素インフラ企業などに売り込む。まず福島水素充填技術研究センターなど2機関から計12台のバルブを受注、稼働を始めた。
新開発のバルブでは水素ガスのバルブ流量を従来比2・5倍の秒速1650グラムに向上した。また本体の内部形状を見直すとともに、バルブ駆動部の推力を増大し本来50%増となる同部直径を10%増に抑えたことなどで、乗用車などの燃料電池車(FCV)向け水素ステーション用バルブと同等サイズに収めることに成功した。
大型トラックなどに搭載された燃料タンクは一般的なFCVに比べて大きく、現在の水素ステーションだと充填に約7倍の22分かかる計算。これを10分程度に抑えられる。大型トラックは乗用車より走行距離が長くなり、それだけ水素充填回数も多く必要となることからも、充填時間の短縮が求められていた。
フジキンではバルブの高耐久化によるメンテナンスや部品交換の回数の低減、バルブの小型化などで、水素ステーション1カ所当たり年間約42万円のコスト削減効果を見込む。
従来のFCV向け水素ステーション向けバルブでは、フジキンの国内シェアは約7割に達する。ただ欧米では2026年までに大型車両向けの水素ステーションが200カ所以上建設される見込みなため、同社では新型バルブの投入によって大型車両向けでも、海外市場で10%以上のシェア獲得を目指す。
日刊工業新聞 2023年06月09日