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マイナス金利導入から1週間。相次ぐ融資打診に中小企業はソッポ

 日銀がマイナス金利政策を導入して1週間となった。中堅中小企業の一部には金融機関から追加借り入れの打診が相次いでいる。利ざや圧縮を想定し、運用難に頭を抱える金融機関が貸し出しに動き出した格好だ。ただ、財務が健全な企業にとっては、足元の資金繰りに問題があるわけでないため、慎重な姿勢が目立つ。

 「こんなにも金利が低いなら、本社事務所を改装しようか」。広島県の食品製造販売会社の社長は冗談交じりに、こう漏らす。日銀のマイナス金利政策導入発表後、地元の銀行3行が借り入れを相次いで打診してきたからだ。以前から金利は低かったが、今回はさらに低い金利を競って提示してきた。

 マイナス金利政策導入から1週間、日銀の思惑通り、市場金利は低下。企業には資金調達がしやすい土壌が整いつつある。とはいえ、市場の資金の需給バランスはいびつだ。中国経済の減速や欧米経済の不透明感もあり、必ずしも、企業全般の設備投資意欲は旺盛でない。マイナス金利政策導入で貸し出す民間金融機関への圧力は強まるが、足元では追加借り入れの必要性はないと強調する経営者も少なくない。

 日銀は貸出金利の低下で企業の借り入れ増につなげ、デフレ脱却を実現する狙いだが、日経平均株価の暴落を見る限り、日銀のシナリオは市場に信じられていない。

 旭産業(愛知県春日井市)の杉山徹社長は「現状で十分低い金利水準であることからも、設備投資や個人消費の増加に帰結するか疑問」と首をひねる。

 マイナス金利の悪影響を指摘する声もある。日本セラミックの谷口真一社長は「無借金経営なので、マイナス金利が借り入れに及ぼす影響はない。むしろ今後は、(金融機関への)預け入れコストがかかってくる可能性がある」と語る。
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日刊工業新聞2016年2月24日1面記事から一部を抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
銀行を取り巻く環境は過酷。マイナス金利導入でじりじりと利ざやが減る一方で、各種規制により運用にリスクは負えない。米S&Pは、日銀によるマイナス金利の導入により、銀行の本業のもうけを示す業務純益が16年度は地方銀行で15%、大手銀行で8%の減益になると試算した。

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