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復調する「カメラ」、富士フイルムHDが見つけた新たな“金鉱脈”

復調する「カメラ」、富士フイルムHDが見つけた新たな“金鉱脈”

ニコンはプロや趣味層に向けた中高級機種に注力する(右が新製品「Z8」)

カメラメーカーの事業が復調してきた。2022年度における大手各社のカメラ事業の売上高合計は、コロナ禍前の19年度を上回る水準となった。ただ、22年度は為替の円安がプラスに働いた側面があり、23年度も同様の効果が期待できるかは不透明だ。他方、5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行した。消費者の外出が増えて撮影機会も増加するとみられ、メーカー各社の好機になりそうだ。(阿部未沙子)

「写真事業は停滞する事業ということだったが、新たな“金鉱脈”を見つけた」―。富士フイルムホールディングス(HD)の後藤禎一社長は手応えを示す。イメージングセグメントの22年度の営業利益は前年度比約2倍の729億円に伸び、23年度も増収営業増益を見込む。

同社のイメージングセグメントにはインスタントカメラ「チェキ」やデジタルカメラ「Xシリーズ」が含まれる。特に、スマートフォン用プリンター「リンクシリーズ」を皮切りにデジタル化を推進してきたことが収益向上に寄与したとみられる。

キヤノンのカメラ事業も好調に推移している。22年に発売したフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ「EOS R6 Mark Ⅱ」などが販売台数を伸ばし、高価格帯の機種の割合が増えた。こうした背景から、ネットワークカメラを含まないカメラ事業で23年の売上高見通しを1月公表比で上方修正した。

さらに初心者向けのエントリー機種の拡充にも取り組む。田中稔三副社長は「裾野を広げるモデルの投入で、22年を上回る販売台数を計画している」とし、販売台数を290万台と推測する。

他方、ニコンは映像事業が23年度に増収営業減益の見通し。「円安効果の減少や市場の正常化に伴う販売促進費の増加」(徳成旨亮取締役専務執行役員)が営業減益要因となる。引き続きプロや趣味層に向けた中高級機種に注力し、平均販売価格の押し上げを図る。消費税込みで約60万円を想定するミラーレスの新製品「Z8」の投入が、好調なカメラ事業を維持できるかのカギを握る。

ソニーグループも23年度のデジタルカメラ事業は増収営業減益を見込む。ただ十時裕樹社長は「(カメラは)好調を維持している」とし、「しっかりと供給して新規(の顧客)を獲得していきたい」と強調。効率的な映像製作に寄与するクラウドなども併せて提供する。

カメラ映像機器工業会(CIPA)が2月に発表した23年の出荷見通しによると、デジタルカメラの総出荷は前年比7・6%減の740万台となる。カメラ市場の拡大のためには、メーカーがハードウエアの製造販売を手がけるだけでなく、法人向け映像製作支援の体制構築といったプラスアルファの取り組みも求められそうだ。

日刊工業新聞2023年5月25日

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