「量子計算×数理最適化手法」ソリューションで海外展開を狙うスタートアップの正体
Jij(ジェイアイジェイ、東京都文京区、山城悠社長)は、量子計算と数理最適化手法を組み合わせたソリューションのグローバル展開に向けて、今夏をめどにドイツに事業拠点を開設する。石油・天然ガスの陸上・海上輸送や発電所の運転計画といった“エネルギーバリューチェーン”を中心に、自動車や工場を含め現地ユーザーのニーズを掘り起こす。量子計算では組み合わせ最適化問題に強い「イジングマシン」を軸に攻勢をかける。
Jijは数理最適化技術の専門家集団。量子計算などに必要な数理モデルの構築や実装を独自のミドルウエア「Jijゼプト」で簡素化するクラウドサービスを展開。量子戦略の策定やコンサルティング、人材育成の支援でも実績を持つ。
海外展開はマレーシアなどアジアで先行してきたが、量子研究への投資拡大などで高まる欧州各国の動きに対応するため、多様な産業ニーズが見込めるドイツへの進出を決めた。ドイツには中田宙志ビジネス統括責任者が駐在し、研究開発拠点である日本と連携しながらグローバル視点で新展開を目指す。
Jijが注力するのは「イジングモデル」と呼ばれる、原子や分子の磁気スピンの相互作用を数学的に表現した理論に基づくイジングマシン。組み合わせ最適化問題などの多数の変数が絡み合う問題を高速で解ける。
技術面では二つの形態がある。一つは量子状態を変化させながら最適解を見いだす「量子アニーリング」方式。これはカナダのDウエーブ・システムズが専用機をいち早く実用化し、日本を含め世界展開している。
もう一つは古典コンピューターを使って、量子コンピューターのような振る舞いをデジタル回路で実現して組み合わせ最適化問題を高速で解く「疑似量子」。これは日本勢が強く、富士通やNEC、東芝、日立製作所が製品化している。
Jijのミドルウエアはいずれにも対応できることから、海外展開では主要ベンダーとの連携を目指す